言葉は怖いものです。
何気ない一言で相手を傷つけたり怒らせたりします。
まずは、相手に落ち着いてもらうことが大事になります。
トラブルになったときの対応について紹介します。
話の途中で怒りだした
自分は攻撃的な言動をしているわけではないのに相手がいきなり怒りだしたことはありませんか。
怒るのには理由があります。
- 「慰めてほしい」「理解してほしい」といった期待を裏切られた
- 強い態度を示すことで聴き手をコントロールしようとしている
- 話し手のコンプレックスや心の傷がふとした言葉で刺激された
- 話したくないことを暴かれるように感じた
怒りには「自分の心の傷や弱さを守るための防御」「心の悲鳴」「聴き手へのSOS」というような側面があります。
怒っている人と話をするには相手を落ち着かせることが必要です。
怒りだした相手の心を落ち着かせるには、まず謝ることです。
「ごめんなさい」と、不快にさせたことに対して言葉をかけ、相手の反応を見るのです。
すると、相手が「あんな言い方ないと思う」と怒った理由を話してくれる場合があります。
理由がわかれば、そのことに対してあらためて謝りましょう。
自分は悪くないと思うことはあると思いますが、自分も怒ってしまっては事態は変わらないどころか悪くなることも考えられます。
職場や取引先はイヤでも付き合っていくことを考えると人間関係は良くしたいものです。
なるべく相手の怒りのポイントを理解し、受け入れるようにしましょう。
怒らせてしまったポイントを理解することで、次のコミュニケーションにいかしましょう。
話を聴いていたら泣きだした
相談などにのっている途中で、相手が言葉をつまらせ泣きだしてしまうことがあります。
親しい間柄でもないのに泣かれると、どうしたらいいのか戸惑うものです。
泣くことにはさまざまな意味があります。
泣くとスッキリすると感じるのは、涙を流すことで感情が浄化される作用(カタルシス)があります。
泣くことで、その人がストレスに押しつぶされないよう、心のバランスが保たれるのです。
相手が泣きだしてもあわてたり、泣いていることを否定したりすることはやめておきましょう。
相手が泣いている間は、泣くことをそのまま受け入れ、泣きやんで再び話し始めるまで見守りながら待ちます。
ただし、なきたいなら、うんと泣いていいよと、泣くことをうながすのもよくないです。
本人が「泣きやみたい」と思っているとしたら、その思いを否定しかねないからです。
本人が落ち着いて、話を再開したら、話の先をせかしたり質問ばかりするのではなく、じっくり話を聴きます。
話し手の感情に寄り添い、共感して理解していることを伝えてください。
クレームがあったときどうするか
取引先やお客さまからクレームがあったとき、どのように対応していますか?
こちらの明らかなミスであればもちろんすぐに謝罪し、しかるべき対応をする必要があります。
しかし、経緯がよく分からない場合や相手に勘違いやミスがある場合は、事実確認をしようとしたり、こちらの言い分や弁解を話したくなるでしょう。
ですが、こちらの言い分を先に言おうとすると、相手の話を聴くことがおろそかになり、「話を聴こうとしない」「困っているのにわかろうとしない」という印象を与えてしまいます。
そのことが、相手の気持ちを逆なでし、事態をこじらせてしまうことになります。
知っておきたい「コップの理論」を紹介します。
人の心をコップにたとえると、コップ(心)の中には、水(話したいこと、わかってほしいこと)がいっぱいになっている状態です。
相手の話を聴くときは、自分が言いたいことはいったんわきに置いて、まず自分のコップを先に空にします。
そして、空の状態で無心に相手の話を聴くと、自分の空のコップに相手の水が入ってきます。
最後まで話しを聴くことによって、相手のコップは空の状態になります。
そこで、あなたから水を相手に流し込むことができ、相手も受け入れるスペースがあるので受け入れるというわけです。
クレーム対応する際は、たとえこちらに正当性があったとしても、まず相手のコップをからっぽになるまで言い分をきちんと聴くことから始めます。
そして。「ご不便をおかけします」「不快な思いをさせて申し訳ありません」と相手の気持ちを受けとめます。
すると相手は、言いたいことが話せた、困っていることがわかってもらえたと感じ、気持ちが落ち着いてきます。
そして、この段階であなたの話を聴いてもらえるようになります。
もし、あなたから話したい説明や言い分があるなら、お客さまの言い分をすべて聴いた後に伝えるようにしましょう。
クレームに限らず、お互いの主張に食い違いがあり言い合いになるようなときは、コップの理論を思い出して、相手の話を聴いてみるといいでしょう。
職場の悪口やうわさ話にまきこまれないようにするには
悪口や興味本位のうわさ話は、トラブルの原因になりがちです。
上司の悪口や批判などで同僚どうしで盛り上がることなんてあるのではないでしょうか。
しかし、本人の耳に入ったらどうでしょう。
業務に支障がきたしたり、悪口を言った人の評価にも悪影響を及ぼしたりする可能性がるので注意が必要です。
自分から悪口を言うことを避けることはもちろん、「あんな人、辞めればいいのに」と内容をエスカレートさせることもいけません。
また、軽い気持ちで調子をあわせて「ほんと、そうだよね」「わかる、わかる」といった同調のあいづちをうつことも控えましょう。
たったそれだけのことでも、悪口に同調していたとトラブルに巻き込まれる可能性があります。
あくまで、「そうか・・・」「そうなんだ・・・」と、相手が感じていることを理解しているというあいづちだけにとどめておくといいでしょう。
悪口や批判の内容がひどくて聴くに耐えないときは、だまって聴いている必要はありません。
「もうそろそろやめない?」と提案してみましょう。
いきなり話をストップをかけることが人間関係上難しい場合は、さりげなく違う話題を出して、違う話をしましょう。
上司のセクハラ的な話がイヤだ
今やセクハラはダメだという認識は広がっています。
ですが、現在でも「女の子はやっぱりひかえめなほうがいいよ」「今日の格好はかわいいねぇ」などと上司と話をしていてセクハラ的な発言はあります。
上司のセクハラ的な発言があったとき、それを上手にかわせる人もいますが、不愉快でつらくなる人のほうが多いでしょう。
そんなときこそ、「そういう言い方はやめてください」「そんなふうに言われるのはイヤです」と勇気をもってハッキリ伝えてください。
よりよい人間関係を築くには「聴くこと」が重要ですが、自分の思いを率直に伝えるスキルも必要です。
どちらかが一方的に自分の意見を押し付け、あるいは我慢するのではなくて、お互いに尊重しながら率直に自己表現ができるようになりたいですね。
伝え方には配慮が必要です。
相手の人格や性格を非難する言い方では、反感をかうだけで自分のつらい気持ちは伝わりません。
あくまでも、よりよい人間関係になることを目指して、具体的な言葉や行動に対して指摘をするようにしましょう。
そして、感情的にならず、きっぱりと冷静に伝えることも大事です。
セクハラやパワハラといったことに限らず、相手に何か改善してほしいことがあったときも同様です。「だらしない」「がんこ」など人格を攻撃する言い方ではなく、「きちんと机を片づけてください」「遅刻はしないように気をつけて」など具体的な事実や行動だけを指摘するようにしましょう。
参考文献
「人間関係がよくなる誰からも信頼される聴く技術」株式会社ナツメ社