迷信や偏見を作り出す仕組みについて解説します

pcnote心理学

どこから、誰から聞いたか、本当に正しいのかわからないが、信じていることはありませんか?
たとえば、「しゃっくりが100回でると死んでしまう」や「茶柱が立つといいことがある」など、本当にどうなのかと思うことでも信じている人は多いかと思います。
迷信や偏見はどのようにして生まれる仕組みを紹介します。

推論の誤りと迷信

「雨男」や「雨女」という言葉を聞いたことありませんか。
誰かが何かをしようとするときに、決まって雨が降ると思われている場合に、その人のことを「雨男」や「雨女」と言うことがあります。
もちろん、ある人の行為が天候に影響するなんて科学的にありえないことです。
しかし、私たちは、日常生活の中で、合理的根拠のないさまざまなこと、縁起が良いことや悪いことを信じて行動することがあります。

たとえば、大学受験の合格を願ってお茶断ちをする人もいます。
また、友引の日に葬式をすると他人の死をさそうようなので、葬式を控える人も多いと思います。

このような迷信行動が生まれるのはなぜでしょうか。
私たち人間は、ある2つの出来事が同時に起こるのをみると、たとえそれが単に偶然だとしても、その2つの出来事の間に何か関係があるように感じる傾向があります。
実際には、一方の1つの出来事しか起こっていない場合が多数あったとしても、それらを無視して、2つの出来事が共に起こった場合に注目するからです。

たとえば、コーヒーを飲んでから仕事をすれば10回のうち7回、契約を成約できるという成功体験があったとすれば、たとえコーヒーを飲まなくても10回のうち7回、契約を成約できたとしても、人の判断はコーヒーを飲んだからだという根拠を重視します。
行為と成功が明らかに無関係であっても、行為のおかげだと考えてしまいます。

人間の情報処理能力には限界があるため、私たちはあらゆる事例を網羅的に吟味しようとしません。
特に、ある行為をして、望んでいた結果になったときは顕著になります。
このように2つの事柄の間の繋がりを実際以上に過大に評価することを、錯誤相関、もしくは誤った関連づけと呼びます。

偏見を作り出す仕組み

誤った関連づけは、さまざまな迷信を生み出すと共に、集団に対する偏見を作ることもあります。
ハミルトンとギフォードが実験をしています。

2つの架空の集団(集団Aと集団B)のメンバーが行ったとする多数の行動文のリスト(「集団Aの○○はXXをした」「集団Bの△△はYYをした」など)を用意し、1文ずつをを実験参加者に見せました。
集団Aと集団Bは規模が異なり、集団Aは集団Bより人数が2倍になるように構成しました。
リストに含まれている行動には、望ましい行動と望ましくない行動がありました。
行動の比率は集団Aと集団Bとも同じで、望ましい行動:望ましくない行動が9:4となるようにしました。
リストの行動文をすべて見終わったあとに、実験参加者に、各集団のメンバーのうち望ましい行動をした人が何人いたか、望ましくない行動をした人が何人いたかを答えてもらいます。
また、それぞれの集団に対する印象も10点尺度上で評定してもらいました。

実験結果は、人数の少ない集団Bのメンバーが望ましくない行動をした頻度を実際より多く、望ましい行動をした頻度実際より少なく見積もった結果が出ました。
一方、人数が多い集団Aは、実際の頻度とのずれが比較的小さかったとのことでした。
また、印象評定の結果は、集団Bは集団Aに比べて社会的に望ましくない集団と評価されてしまいました。

これは錯誤相関のもたらした結果ということができます。
この実験では、望ましくない行動は望ましい行動のに比べ相対頻度は少なくなっており、そのぶん実験参加者の注意を引いたと考えられます。
また、集団Aのメンバーがリストの大半を占める中で、ときどき集団Bのメンバーが登場すると、その珍しさから目立ったと考えられます。

たとえば、女性がたくさんの職場に、男性が一人か二人いると、男性が目立ちますよね。

このように、注目されやすい望ましくない行動を同じく注目されやすい少数集団の人間が行うと二重に目立ち、両者が誤って関連づけられやすくなります。
人間は、目立つこと、印象に残ることに引きずられて信念を形成しているといえます。

また、ロスバートたちの実験でも示されています。
ロスバートの実験では、50人の集団の中で10人が犯罪行為をしたとして内容が伝え、その後に記憶テストをしました。

結果は、犯罪内容が凶悪な場合は軽微な場合に比べ、集団内の犯罪者の人数が過大に報告されるとことがわかりました。
極端な事例は注意を引きやすく、少数であっても集団全体の印象に及ぼす影響が大きいのです。

集団イメージの主要な情報源であるメディアでは、極端な事例を取り上げることがあることを考えると、引っ張られる可能性があり、影響力は大きいです。

まとめ

大企業で、不祥事で事件になったとします。
不祥事に関わっていた人がわずか数名であったとしても、企業に勤めている全ての人が不祥事に加担していたのではないかと思うことはあります。
このように誤った推論により、多くの真面目に仕事をしている人たちが、いわれなき偏見で悪く見られることがあります。

私たちはテレビや新聞、インターネットからたくさんの情報をえています。
偏見な見かたをすることなく、情報を把握する必要がありますね。

参考文献
「よくわかる心理学(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)」