人のうわさってどこからともなく耳に入ってきませんか?
また、毎年違ったものが流行し、瞬く間に広まりますよね。
現在は、SNSやインターネットを使えば、簡単に情報を得ることはできますし、発信もできますが、うわさや流行はなぜ広まるのでしょうか?
うわさと流行の心理について紹介します。
うわさと流行の共通点
うわさと流行のに共通していることは、ともに私たち自身が情報を伝えるメディア(媒体)として重要な役割を果たしている点です。
マスメディア(テレビ、新聞など)が伝えるのではなく、私たちが情報を伝えたり、実際の流行している商品を身に付けたりすることで、うわさや流行が広まると言われています。
社会心理学では、うわさや流行を集合行動という概念で説明しています。
集合行動とは、「特定の行動が諸個人の間に連鎖的に伝播・拡大して一定の社会的過程を形成していく動的な様相」と定義されています。
一人ひとりの自発的な行動が、集合的に発生し、結果として一つの方向をもった流れを作り上げるものなのです。
うわさの背景にある心理
オルポートとポストマン(Allport,G.W.&Postman,L.)は、うわさを「正確さを証明することのできる具体的なデータがないのに、口から耳へと伝えられて、次々と人々の間に言いふらされ信じていく、出来事にかんする記述」と定義しました。
うわさを伝言ゲームのようなものと考え、伝えられていく過程でうわさの内容が変容すると考えたのです。
また、出来事についてのうわさの広がり(R)は、集団成員の生活でその事柄がもつ重要性(i)とあいまいさ(a)に比例し、集団の中に広がっていくとし次のように公式化しました。
あいまいさが高ければ高いほど、重要性が高いほど、うわさが広がりやすいということを表しています。
うわさの公式
R~a×i
うわさを伝言ゲームのようなコミュニケーション過程としてとらえる立場に対し、シブタニ(Shibutani,T.)は、あいまいな状況の解釈の過程と規定しています。
あいまいな出来事が起こったとき、人々はその出来事に納得のいく説明を集団で考えていきます。
その過程がうわさの流布過程であるとしています。
多くの人が納得する解釈が次々とつくられていき、その結果としてうわさの変容が生じるとしました。
うわさは、うわさを聞いた人が自発的に他人に伝える過程です。
後になって考えると、とても真実に思えない内容が広まるのは、私たちがあいまいで不安を感じる状況に置かれたときです。
自分が感じている不安やあいまいさに説明を与える情報(うわさ)を人々が求めているからなのです。
そして、同様な状況に置かれている人々に自分の聞いたうわさを伝えるのです。
うわさ話は信じやすい
たとえば、社内で愛妻家として通っている上司がいます。
ある時、同僚が「じつは上司って社内不倫しているんだって」とコソコソ話をしていました。
このうわさは話の真偽はまったくわからないし、興味もないとしても、他の誰かに上司のことを聞かれたら、このように答えるかもしれません。
「ここだけの話、じつは社内不倫しているみたいだよ」と。
人は事の真相を確かめずにうわさ話やゴシップを大いに信じてしまう傾向があるといわれています。
このことを実験で証明したのが、カナダにあるカルガリー大学の心理学者、デビット・ジョーンズです。
実験は、「電話帳を引いて名前を調べる実験です」という名目で実験参加者を集め、待合室に待機させました。
このとき、待合室には2名のサクラの女性がいて、他にも聞こえる程度の声で次のようにしゃべってもらいました。
A「この実験、おもしろいらしいよ」
B「この実験、退屈らしいよ」
実験参加者たちはこのいずれかを聞いてから、実験に参加しました。
そして実験終了した後、実験への評価を尋ねたところ、Aの「おもしろいらしいよ」という話を聞いていた人たちは「おもしろかった」と答え、Bの「退屈らしいよ」という話を聞いていた人たちは「つまらなかった」と答えた結果が出ました。
この「人は偶然耳にしたうわさ話のほうに信憑性を感じる」という働きのことを、心理学では「漏れ聞き効果」と呼んでいます。
つまり、自分自身の感想だと思っていたことが、うわさ話に大きく影響を受けていたということです。
流行の背景にある心理
社会の中に、これまでになかったものが急速に広まっていくことがあります。
流行商品ばかりでなく、私たちの髪型や服装、考え方や物の見方、さらに言葉でさえ流行があります。
それらの中には、社会の中に溶け込んで、社会生活を変えていくような流行もあります。
しかし、流行には社会的に重要なものと重要でないものがあります。
流行現象を、社会を変えるような新しい変革と区別させる特徴として、「効用からの独立」「短命的」「瑣末性」をあげる論者もいます。
社会の中に新しい流行が起こると、それをいち早く採用する人もいれば、多くの人が採用してから取り入れる人もいます。
ロジャーズ(Rosers,E.M.)は、社会や社会生活を変革するような新しい技術や考え方が、社会に定着していくものを多く想定しています。
また、人々を流行採用時期によって、いち早く取り入れる革新者(社会の中に2.5%)、ついでに初期採用者(13.5%)、前期追随者(34%)、後期追随者(34%)さらに遅滞者(16%)の5つにカテゴリー化しました。

これら人々が何によって影響を受けるかを示しました。
情報の流れを示す太線は、すべてのカテゴリーに影響しています。
流行している情報は、マスメディアを通してどのレベルの人でも知るのです。
しかし、自分がその流行を採用するかどうかは、マスメディアによって影響を受けること少なく、自分よりも少し進んでいる人、すでに流行を採用した人々の影響を受けることを示しています。
周囲の人が採用すると自分も採用するのです。
流行を取り入れる動機には、人より目立ちたい、人と違うことを示したいという「個別性や他人からの区別を求める欲求」があると同時に、みんながもっているから、みんながやっているから自分もするという「他人との同調を求める欲求」もあります。
みんなとは違うことを望みながら、みんなと同じでありたいという矛盾する動機で流行は作られているのです。
まとめ
現在は、SNSやインターネットで簡単にさまざまな情報が手に入ります。
しかも、情報を簡単に発信できます。
流行っていることや伝えたいことを発信できることはいいことですが、真実でないことを発信してしまう可能性があります。
便利なものはどんどん使っていきたいですので、手に入れた情報が本当かウソなのかを見極める力が私たちに求められていますね。
参考文献
「よくわかる心理学(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)」
「一瞬で人を操る心理法則」