心理療法とはなにか?歴史と理論と目的と方法について解説します

heart心理学

心理療法という言葉をどこかで聞いたことあるかもしれません。
私たちがカウンセリングなどを受ける際に使われるのが心理療法です。
心理療法とはなにかについて解説していきます。

心理療法の歴史と理論について

心理療法(psychotherapy)の起源をどこまでさかのぼるかについては、さまざまな考え方があると思います。
悩みや苦しみは時代や地域を超えて普遍的に存在するということができます。
このような人間の苦悩に向き合うことを心理療法と言わず昔から地域にある場合があります。
また、「臨床心理学」や「心理臨床学」の起源も関わってきますし、近代科学の誕生とも関連します。
ここでは、力動精神医学の歴史を参照に解説していきます。

心理療法の起源

心理療法の起源については、未開民族の治療にさかのぼります。
近代文明の影響を受けない未開民族の営みでは、呪医(medicine man)やシャーマン(shaman)が人間の病気や悩みに向き合っていました。
そこでは、病気や悩みと治療が因果的にとらえられていました。
すなわち、病気になったり悩みで苦しむのは原因があり、その原因を治療によって除去するという考え方です。

たとえば、霊魂が身体から離脱したために病気になったから、霊魂を呼び戻すことが治療と考えられていたのです。

どのような治療であったのかについては、エレンベルガー(Ellenerger,H.F.)が記述しています。
現代の心理療法をほのめかす治療方法として、古代ギリシャ時代の「インキュベーション(incubation)」をあげることができます。
「インキュベーション」は「参籠さんろう」とも呼ばれています。

古代ギリシャでは、病気になったり悩みに苦しむ人間は、たとえば、アスクレピオス神殿の洞窟に一夜、身を横たえるのです。
その夜、ヴィジョン(夢幻)を体験し、そして治るとされていました。

このような治療法は、現代の心理療法における「自己治癒」という考え方に通じるものがあります。

また、エレンベルガーは未開民族の治療の基本特徴を治療者の観点からまとめています。
これは、現代の心理臨床を考える上でも興味深いものです。

未開民族の治療の基本特徴

  1. 治療者はたんなる医者ではなく、その社会集団の最高人物である。
  2. 治療においては、治療者の人格が主力になる。
  3. 治療者養成は、秘儀の伝授など相当な訓練を必要とする。
    また、しばしば、みずからが病気に陥りそれを克服してはじめて治療者になる。
  4. 治療者のもっとも重要な治療法は心理的技法であり、治療者は心身治療者である。
  5. 治療は、たいていは構造化された集団で執り行われる。治療は祭儀でもある。

参照:エレンベルガー,H.F.木村敏・中井久夫(監訳)1980 無意識の発見 上 弘文堂

未開民族の治療法は、その後、宗教や哲学など人間の病気や悩みにかかわるさまざまな領域に影響を及ぼしながら、祓魔師(エクソシスト)であり神父のガスナー(Gassner,J.J.)、「動物磁気」という考えを発見したメスメル(Mesmer,F.A)を経て、19世紀半ばにシャルコー(Charcot,J-M.)を代表とする「催眠術(hypnotism)」に関する研究へと発展していきます。

この流れは、19世紀後半になると、シャネ(Janet,P.)による「心理分析」へと受け継がれ、フロイト(Freud,S.)による無意識の発見へと繋がっていきます。

精神分析

フロイトは、当時の治療者が中心的にかかわる病気であった「ヒステリー」などの神経症の発症の仕組みについて、はじめて理論的な説明をしました。

「無意識(unconsciousness)」の存在を科学的に実証するというものでした。
無意識とは、ある特別な方法を用いないかぎり、その内容が意識化されないように深く抑圧されている人間の内面世界を指します。

無意識の発見のきっかけになったのは、ウィーンの内科医ブロイアー(Breuer,J.)が催眠治療を行っていた患者のアンナ(Anna,O.)の話です。

アンナはヒステリー症状のひとつとして、コップから水を飲むことができないことに苦しんでいました。
ブロイアーは、アンナを睡眠状態にして自由に話させていると、あるときアンナはこのようなことを話しました。

アンナはあまり好きではなかった婦人の部屋で、婦人が仔犬にコップから直接水を飲ませていたのを目撃しました。
アンナは、嫌悪感を抱きましたが、失礼のないようにと思い、何も言いませんでした。
催眠中のアンナは、この内容を激しい怒りとともに話しました。
話した後、コップから水を飲むことができ、催眠からさめて後も、自由に水が飲めるようになりました。

この症例から、フロイトは、仔犬がコップから水を飲んでいたことにアンナはまったく気づいていませんでした。
すなわち、意識にありませんでした。
しかし、まぎれもなくアンナに存在していました。
催眠を通して事実が意識化され明らかになったのです。

このことは、無意識に抑圧されていた心的内容が意識化される過程ということができます。

フロイトは、ヒステリーにはその原因となる外傷体験が存在し、本来その体験とともに発散されるべきエネルギーが貯留しているために症状が生じると考えました。
したがって、治療は貯留しているエネルギーを発散させることです。

催眠によって無意識に抑圧されていた内容を思い出させ、それとともに情動を体験させるということです。
そして、貯留していたエネルギーが発散され、症状が消失します。
この治療法は「カタルシス法」と呼ばれています。

その後、アンナの症例を契機として神経症の発生の仕組みを明らかにした神経症理論、夢が形成される過程に着目して理論化させた夢学説、力動的見地から精神内界を明らかにしたリビドー理論などは、フロイトが代表的なものです。
フロイトは、心理療法の道を開いたといえるでしょう。

フロイトは当初、カタルシス法によって治療を行っていました。
治療を行っていくうちに、すべての人を催眠に導入できることができないことから、科学的ではないと考えました。
そして、催眠状態にしなくても、覚醒状態で同様のことが可能になる方法として「自由連想法(free association method)」を考えました。
自由連想法は、寝椅子に横になった患者に自由に話してもらうことをいいます。
自由連想法でフロイトの「精神分析」が誕生しました。

分析心理学

20世紀初頭に、分析心理学の創始者であるユング(Jung,C.G.)は、フロイトに会いました。
フロイトは、1896年に「精神分析」と命名した人間存在の探究法を確立し、1900年には、「夢判断」を刊行し、夢の形成プロセスの理論化を行っていました。
ユングも夢について探究していて、20代にフロイトの「夢判断」を読んで感激し、これが契機になって2人は出会うことになりました。

当時の精神医学の領域は、ドイツの現象学を主流としていて、患者の症例や行動を記述することによって、なんらかの診断に当てはめることが精神科医の仕事となっていました。
患者を一個人として理解しようとする姿勢があまりなかったといえます。
個人を尊重する考え方は容易には受け入れられなかった時代でした。

ユングもフロイトも、個人を尊重する姿勢を持っていました。
フロイトが、ヒステリーを中心とした神経症を対象にしたのに対し、ユングは、統合失調症を中心に個人実践を行いました。

そして、統合失調症の症状である幻覚や妄想は理解不能とされていた時代に、心理的起源と意味があることを論証しました。

出会いから数年後、ユングとフロイトは、考え方の相違によって決別することになります。

決別後のユングは、人間のタイプに関する研究、コンプレックスの発見、集合的無意識と元型の仮定、イメージと象徴に関する研究、夢分析、心理療法と個性化など、多くの研究や理論を残しています。

心理療法の目的

治療について考えてみます。
人は、「健康」から「病気」になると、病気から解放されて元気になりたいと思います。
また、悩みや苦しみの中にあるときは、解放されたいと願います。

では、人はどうすれば病気や悩みの苦しみから解放されるのでしょうか。

解放される方法は2つ考えられます。

一つ目は、完全な健康体を手に入れることです。
病気や悩みに苦しむことのない心身を手に入れれば、何も問題ありません。
しかし、そのような方法は存在しません。
病気や悩みと共に生きていくことのほうが現実的ですね。

二つ目は、自殺することです。
自殺することによって、病気や悩みの苦しみから解放されるということもできるでしょう。
自殺をどのように理解するかについてはさまざま意見があると思います。
私は病気や悩みの苦しみから解放されるからといって死んでしまっては意味がないと思います。
みずから命を絶って解決するのは間違いであるし、人に促すこともあってはなりません。

解放される方法2つあげたのですが、2つともありえない方法です。
人は、病気や悩みの苦しみから完全に解放できる方法は見出していないことがわかります。

ここで「治療」がでてきます。
治療は、専門的な方法で健康な状態に回復させることをいいます。
心理療法での治療をみていきましょう。

「治す」モデル

未開民族の治療から現代の心理療法にいたるまで、ほとんどの心理療法の目的は「治す」ことでした。
心理療法でもって「健康」な状態に回復させること、それが「治す」ということなのです。
この「治す」モデルは、総じて病気や悩みには原因があるという因果的な理解をしますので、治療としては原因を除去するということになります。

「治す」モデルは科学的方法論を用いて病気や悩みの原因を取り除こうとします。
フロイトの精神分析はこのモデルの典型といえるでしょう。

「治る」モデル

「治す」モデルは心理臨床家が相談者を「治す」という、イメージしやすいものですが、はたして心理療法の実際においては、そのように相談者は回復していくといえるでしょうか。

たとえば、子どもの手の甲に小さな擦り傷ができたとしましょう。
母親は擦り傷を舐めてくれました。
しばらくすると擦り傷は治りました。
このような場合は、母親は子どもの擦り傷を治したと単に言い切れるでしょうか。
子どもの身体が擦り傷を治したということもできるのではないでしょうか。

ロジャーズ(Rogers,C.R.)は、人間の「こころ」には身体と同じようにみずから回復していこうとする力があることを論証しました。
この力は「自己治癒力」と呼ばれています。

心理療法において、相談者の「語り」を評価せずにそのままに、こころを傾けて「聴く」ことに専念すると、相談者に「自己治癒力」が働き、相談者はみずから治っていきます。
これを理論化したロジャーズは「来談者中心療法(client-centered therapy)」を創始しました。

現在、ロジャーズの考え方は、日本の心理療法として必要不可欠な技法として広く受け入れられています。

新たなモデル

現在では、人間と人間がかかわるほとんどすべての領域において、心理臨床の専門性が必要とされています。
医療や教育現場はもとより、福祉、司法、看護、警察、被害者支援など、多種多様な場面で臨床心理士や心理カウンセラーが活動しています。
このような心理臨床の広がりは、現代社会に生きる私たちが必要だと感じているということができます。

心理療法が多種多様な場面で使われることによって、「治す」「治る」モデルをそのまま適用できないことがでてきます。

たとえば、福祉の領域における子育て支援を考えてみましょう。
そこでは、「治す」「治る」というよりも、子どもの成長を最大の要因として、その成長力に期待したかかわりが大事になってきます。

また、ホスピスでは、死に逝く人にかかわることになります。
糖尿病などの慢性疾患において治らない病気を抱えた人にかかわることになります。
「治らない」人が目の前に存在しています。
この「治らない」をどのようにして引き受けていくことができるでしょうか。
「治す」「治る」モデルだけでは対応できません。

「治す」「治る」だけでなく、別の「生きること」についてのモデルが求められているのではないでしょうか。

相談者からみる

相談者は何か訴えたいことを抱えて心理療法の場を訪れます。
この相談者の「相談したいこと」や「訴え」を主訴といいます。
心理療法の目的は、そうした主訴が解消されることであるといえます。
そして、心理療法は相談者にとって意味あるものでなければなりません。

たとえば、ある人が「仕事がイヤでつらい」という主訴で相談しに行きました。
心理療法で「仕事がイヤでつらい」という主訴の解消をめざします。
ところが、相談者のほんとうの悩みは、主訴とは別のことであったというのが意外に多くあります。
「仕事がイヤ」ではなく「ギスギスした人間関係がイヤ」といったことがあります。

人間の「こころ」は必ずしも意識のみでクリアにとらえられるものではありません。
心理療法の過程のなかで、相談者が意識していなかったことに気づくという場面があります。
あるいは、主訴が解消した後も相談者が相談し続ける場合もあります。
このときに、主訴が解消したから心理療法も終結するとは簡単に判断できないわけです。
相談者に新たな主訴が生まれたと考えることもできるからです。

心理療法の目的を単に主訴の解消であると言い切ってしまわずに、自分の気づかないことに気づける、そして、解消するにはどうしたらいいかを心理療法を用いて探ってみるという感じなのではないかと私は思います。

心理療法の方法

心理療法の方法をみていきましょう。

精神分析の方法である自由連想法においては、静かで落ち着ける部屋で、寝椅子を用いて、1回50分の時間で、毎週4~5回行うのが正当なやり方になっています。
治療者は患者から見えないところに腰かけ、患者に対して思い浮かぶことを、なんでも話すように促します。

来談者中心療法では、静かで落ち着ける部屋で、椅子に腰かけ、1回50分の時間で、週に1回行うのが基本になっています。
心理カウンセラーは、対面もしくは90度の角度で腰かけて、相談者にどんなことでも自由に話すように促します。

心理療法によってやり方は変わります。

場所

心理療法では、決まった部屋で相談者に会うことことが基本です。
毎回、場所や部屋変わってしまうと、お互いに落ち着くことができません。

さらに、静かで落ち着ける場所で、話の内容が外に漏れないようになっていることが必要です。
話される内容には守秘義務があります。
また、話しを誰かに聞かれているような場所では、相談者は話したくないですよね。

相談者が行きやすいようにする配慮として、部屋のある場所は、あまり目立つ場所でないほうが良いといわれています。

料金

心理療法を受けるには料金が必要です。
料金は受ける機関によって変わりますので、心理療法を受ける前に確認しておきたいところです。
また、公的機関であれば無料に相談を受けれることもありますので、試しに受けに行ってみても良いと思います。

時間

心理療法を行う機関によって多少の長短はありますが、1回50分というのが基本となっています。
50分なんて短くて話したいこと話せないよって思われるかもしれません。
相談するからにはじっくり長い時間をかけて話したい気持ちはわかります。
ただ、1回の相談に時間をかければ良い結果がえられるというわけではありません。

相談の内容にもよりますが、1回で解決するというよりも、時間を空けて何回か受けて解決していくほうが多いです。
プロだからといってすぐに解決はできません。

悩みを解決するのは、相談者自身です。
心理療法は、解決する手助けをしてくれるきっかけにすぎません。

まとめ

心理療法について解説してきました。
人のこころは昔から考えられていて、そして理論化されています。
完璧な理論はありませんが、有効であるのは間違いないです。

心理療法は精神分析や来談者中心療法だけでなくさまざまあります。
少しでも、心理療法に興味をもってもらえればうれしいです。

悩みや不安は誰にでもあります。
自分ひとりで抱え込めない場合は、心理療法ができるプロに相談してみてはいかがでしょうか。

参考文献
「よくわかる心理臨床」