「フロイトの精神分析学」の無意識や夢分析の紹介をします

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心理学を勉強していなくても「フロイト」という人物の名前は聞いたことあるかもしれません。
フロイトは精神分析学の創始者であり、無意識の存在や夢を分析などしました。
フロイトの精神分析学はどのようなものだったのかを紹介します。

フロイトの精神分析

ジグムント・フロイトは、オーストリアのウィーンで医師として神経症の診療と研究をして、治療技法と人格理論の体系である精神分析の創始者です。
フロイトの主張のなかでも、特に影響が大きかったのは、人の意識的な意志は従来考えられていたほど統率力があるわけでなく、むしろ無意識の力に翻弄されているという視点でした。

無意識の存在

フロイトは神経症、特にヒステリーの研究を通して、無意識の働きが重要であることに気付きました。

19世紀までは、ヒステリーの症状は器質的な障害であるという見方が強かったのですが、当時フランスの神経病理学者シャルコーが、催眠によってヒステリー症状をつくりだしたり消失させたりできることを示し、精神力動的な視点からヒステリーの治療を試みていました。

シャルコーのもとで学んだフロイトは、はじめ催眠による治療を行っていたのですが、無意識にアプローチするよりよい方法を模索する中で、催眠に代わるものとして精神分析の技法をつくりました。
同時にフロイトは、臨床活動を通してヒステリーの心理的メカニズムを理論化しました。

無意識になっていた過去の体験を強い感情とともに想起させることによって症状が消失することから、無意識にうっ積していた感情のエネルギーによって症状が引き起こされると考え、無意識の心的過程の存在を確信するようになりました。

フロイトの考えた心の構造

フロイトははじめ、人の心を意識・前意識・無意識という3領域に区分しました。
これは局所論と呼ばれています。

無意識は意識しようとしてもなかなか意識化することのできないものが蓄積している心の深層です。
前意識とは、意識が向けられていないときに意識は上がってきませんが、意識を向けさえすれば意識化できるものが存在している心の領域です。
意識・前意識は意識化可能な領域ですが、意識化すると葛藤を引き起こす恐れのあるものについては「検閲」によって無意識に「抑圧」されると考えます。

このようにフロイトは抑圧を働かせている意識であるという前提で理論化していたのですが、抑圧の働きはその多くが無意識であるという認識によって、意識・前意識・無意識からなる局所論に加えて、自我・エス・超自我という3つの心的組織からなる構造論を作り上げました。

エスというのはドイツ語で「それ」を意味する非人称代名詞です。
エスは欲動的、無意識的なもので、時間や空間の概念に縛られず、快感原則に従って欲動の満足を求めようとします。

一方、自我は現実原則に従って、外界にある現実とエスの欲動満足とのあいだを調整します。
これら自我の働きは、その多くが無意識的で、抑圧も無意識的な自我の働きと説明されます。

超自我とは、構造論として理論家する前には「検閲」の働きとして注目していたものです。
超自我の基本的な働きは自我の動きを監視する役目で、道徳的な良心や罪悪感、自我に理想を示すなどの機能があります。
超自我の働きによって生じる罪悪感の大部分もまた無意識的なものです。

フロイトは精神分析を実践する中で、満足を得たり快適な状態になると自分を責めたり処罰をようとして、あたかも自ら不幸な状況や心身の病気を招くかのような反応をする人がいることに当惑し、超自我の働きによって無意識的に罪悪感が引き起こされたのだと考えました。

超自我、自我、エスは互いに影響し合い、その人のパーソナリティを成立させています。
フロイトは、これら無意識の領域に入り込み、抑圧されていたものを解放できれば心の病気を治せると考えていました。

フロイトが精神分析学を構想するヒントの一つになったエピソード

【アンナの症例】
アンナは語学が堪能なユダヤ系の女子学生で、病気の父を献身的に看病していました。
ところが、父の死がきっかけとなってヒステリーの症状が起きました。
アンナは母国語はドイツ語でしたが、英語しか話せなくなりました。
また、意識が途絶えたり、水が飲めなくなったりといった奇妙な症状も現れました。

フロイトの共同研究者のブロイアーが催眠治療を施しているときに、アンナは自己催眠状態に陥り、それまで忘れていた過去の記憶について話しはじめ、話し終わると、飲めなくなっていた水を飲むことができるようになっていました。
そしてアンナは、自分自身のこの不思議な体験を煙突掃除と名付けたそうです。

フロイトによるアンナがヒステリーになった原因の解釈

【アンナの症状のフロイトの解釈】

人間の心は心のエネルギーが流れる煙突のようなもので(フロイトは、この心のエネルギーのことをリビドーと呼びました)、煙突にすすがたまると煙が流れなくなるように、人はリビドーの流れが滞るとヒステリーなど神経症になってしまう。
しかし、その原因を自分では意識することができない。
また、リビドーの流れを滞らせる原因は、子どもの頃の不快な出来事やコンプレックスである。

コンプレックスとは、何らかの願望を抱きながら同時にそれを抑圧するという相反する力が心の中で作用しあうことを指す。

アンナの場合は、幼いころに体験した「水を飲む犬のイメージ」「その犬をかわいがる女性の家庭教師」「父親に色目を使う家庭教師に対する願望と嫌悪感」が複雑なコンプレックスを形成していた。
アンナはそのコンプレックスを抑圧していたので普段は思い出すことができなかったが、自己催眠状態で抑圧の力が弱まり思い出すことができた。

このようにして滞っていたリビドーが流れるようになり、ヒステリーの症状が軽くなった。
(アンナのいう煙突掃除のことをフロイトは浄化(カタルシス)と呼びました)

エディプス・コンプレックス

発達的には超自我は自我から分化してくると考えられていますが、そのきっかけとしてエディプス・コンプレックスと呼ばれる内的な葛藤状態が強調されます。

エディプス・コンプレックスとは、4,5歳の子どもが心の中で体験する、異性の親への近親的な愛着が同性の親との競争関係を生み出すという三者関係の情緒的葛藤です。
競争関係にある同性の親に脅かされたり処罰されたり、あるいは愛情を失ったりするのではないかという不安を抱くことで、異性の親への近親的な愛情は断念されます。
そして、欲望を禁止する同性の親が心の中に取り入れられて、その人の良心や自我理想として、時には無意識的罪悪感として自我を厳しく監視するようになります。

こうして超自我が心の中に成立することで、人はルールに従って欲動を抑制し、自分の行動を適応的に調節しながら他者と共存しようとする社会的な存在になっていくと考えられています。

自我は、エス、超自我、そして現実の三者に対して調整役を務めています。
しばしばそれらはぶつかりあって葛藤を生み出し、欲求不満に陥れ、あるいは不安を生じさせます。

自我は防衛機能という働きで不安や混乱を切り抜けようとします。
フロイトは、人の心の中にあるこうした内的な葛藤とその対処をとらえようとしました。

フロイトの夢分析

フロイトは、物忘れや言い間違いにも原因があり、人はそのことに気づかないだけなのだと考えました。
さらにフロイトは、この考えをも夢にも適用し、人が夢を見る目的は、現実世界では果たすことができなかった願望を充足することなのだと考えました。

たとえば、「昼間においしいお菓子を食べることができなかった子どもは、夜に夢の中でお菓子を食べる」というわけです。
しかし、大人が見る夢は少し複雑です。
なぜなら、大人の心には超自我が形成されているので、夢の中でも検閲が行われるからです。
そのためフロイトは、大人の夢の場合には願望が直接的に表現されずに、別のイメージに置き換えられ、象徴的に表現されると考えました。

たとえば、小箱や宝石箱などは女性の性器の象徴で、階段の手すりを滑り降りたり、部屋の中に入ったりすることは性交の象徴だと解釈しました。

つまり、象徴的に表現された夢を解釈することによって相談者の抑圧された願望やコンプレックスを分析することがヒステリーや神経症の効果的な治療法になると考えたのです。

まとめ

精神分析の理論と方法は、当時の精神医学会では非科学的な解釈だとして、あまり受け入れられなかったそうです。
しかし、次第にフロイトの考えに賛同する研究者が増え、現在ではフロイトの精神分析は世界中に広まっています。
特に、性格心理学や臨床心理学の分野で重要な位置づけになってます。

フロイトの精神分析は、人の心の中を探るものです。
人の心という目に見えないことを説明することは難しいことです。
それを解明しようとしたフロイトは現在でも学ぶことは多いです。

参考文献
「よくわかる心理学(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)」

「史上最強カラー図解プロが教える心理学のすべてがわかる本」