人は人生の最期をどのようにして受け入れて、老いても幸せに過ごすにはどうしたらいいのでしょうか。
死は誰にでもむかえることです。
最期まで自分らしく生きるために何をしていくのか、または、何ができるのかを考えてみませんか。
人は死をどのようにして受け入れるのか
人の生涯は死によって幕を閉じます。
老年期になると、たとえ自分は元気であっても、身近な人の死を経験していきます。
そして、やがて訪れる自分の死を予感します。
誰しも死に対して直面すると穏やかではいられません。
高齢者の死は、老衰や事故もありますが、ほとんどが病気によるものと言われています。
精神科医のロスは、余命を知らされた人間がどのように死を受け入れるのか、プロセスを5段階で説明しています。
死の受容の5段階
①否定と孤独の段階
余命を知ってショックを受ける。
余命のことが信じられず否定しようとする。
②怒りの段階
残された時間が少ないことに焦り、怒りやすくなる。
周囲の家族や医者が怒りの矛先になる。
③取引の段階
何とか死から逃れようと手を尽くす。
④抑うつの段階
すべての努力が無駄だと悟り、悲しみのあまり抑うつ状態になる。
⑤受容の段階
静かな気持ちで死を待つようになる。
痛みや不安からも解き放たれる。

受容の段階にたどり着くには、本人だけの努力だけでは難しいです。
家族や友人など、周囲の親しい人による支えが必要です。
このような支えの中で、自分は愛されている、自分の人生には価値があったと実感することが、死を受け入れるカギになります。
自分の人生を受け入れる方法「回想法」
心理社会的発達理論のエリクソンは、老年期の発達課題を「統合対絶望」としました。
人生の良い面と悪い面を見つめ直し、自我の統合性を獲得する(自らの一生を丸ごと受け入れる)ことが老年期では必要であり、受け入れることができなければ、人は自分の生涯を後悔し絶望の気持ちの中で死ななければならないというのです。
自我の統合性を獲得する方法として行われているのが、精神科医のバトラーが提唱した回想法(ライフレビュー)です。
回想法は、高齢者が自分の人生を振り返り、かつ他人に語りかけることで、人生に新たな意義を見いだすことをします。
過去の人生を批判的に検討することで、それまで受け入れられなかった未解決の葛藤が解決されると考えられています。
回想法は現在、高齢者の心理的ケアの手段として発展し、認知症患者などのコミュニケーションスキル改善、社会化を促進することを目指す回想法(レミニッセンス)と区別されることがあります。
回想法で、人生を振り返る過程の中で、老いによって傷つけられていた自尊心が回復したり、死の不安が軽くなるという効果があると言われています。
回想法


幸福な老いとは?サクセスフル・エイジング
幸福に老いることを「サクセスフル・エイジング」と言われることがあります。
老年期は体力が衰えるほか、社会人として第一線を退く、近親者が亡くなるなど、さまざまな喪失を経験する時期です。
老いのネガティブな側面のみをとらえていては、幸福な余生は望めません。
サクセスフル・エイジングは、老いを受け入れて、その過程に適応するための試みだと言えます。
幸福な老いをどう計るのかについてはいくつかの指標があります。
近年注目されているのは、高齢者が人生や生活に抱く主観的な満足を示す主観的幸福感です。
「昔はこうだった」などと過去を評価するのではなく、この瞬間いかに満ち足りているかこそを問題とする指標です。
主観的幸福感を決めるのは、たとえば、健康状態や経済的安定などです。
また、ソーシャル・サポートも重要であると言われています。
家族や友人、知人たちとの人間関係や支えのことです。
人は支え合う仲間がたくさんいて、交流が活発であるほど自分の人生には価値があると感じられます。
定年をむかえて職場の人間関係を失ってもソーシャル・サポートがあれば生きがいを失うことはありません。
ソーシャル・サポートが老年期を支える
・情緒的サポート
共感や愛情の提供など心のケア
・道具的サポート
金銭など形のあるモノやサービスの提供
・情報的サポート
問題解決に必要なアドバイスや情報の提供
・評価的サポート
適切な評価を提供
ハウスは1981年に、ソーシャル・サポートの機能を4つに分類しました。
良好なサポートを受けられる人は、ストレスが少なく、心身の健康を保ちやすいとされています。
理想の老いを考えるモデル
老いは人それぞれ多様です。
サクセスフル・エイジングについても、3つの考え方があります。
- 活動理論
- 離脱理論
- 継続理論
活動理論は、老年期に入っても若いころと同じように活動的に過ごすことが、その人の生きがいを保つという考え方です。
仕事を続けてもいいし、仕事の代わりになる趣味や地域活動でもよいとされています。
離脱理論は、社会の第一線から身を引いて活動を縮小して、自分のために時間を使うのがよいとする考え方です。
継続理論は、変化はしつつも高齢期に入っても、それまでに築いてきた習慣が維持、継続されるという考え方です。
高齢になっても働きたいや働いている人は増えています。
働く理由は、経済上の理由が多いのですが、生きがいや社会参加のためという理由もあります。
若い間に、老後どのようにして生活するのかを考えておくと、老いても幸せに生きていくことができます。
まとめ
人生はいつ何が起こるかわかりませんが、先のことを考えておくことは大事だと思います。
いくつになっても社会との繋がりがある方が、健康で元気に生活している人が多いと感じます。
自分のこれからを考える終活をしてみるのもよいかもしれません。
歳をとっても楽しい人生を過ごせるようになりませんか。
参考文献
「史上最強カラー図解プロが教える心理学のすべてがわかる本」