私たちは、組織や集団で活動するとき、良いリーダーのもと活動したいですよね。
また、自分がリーダーなら、みんなから指示され、良きリーダーになりたいと思いませんか。
集団を成功に導く、生産性を上げることができるリーダーの条件は何なのでしょうか?
リーダーについて考えてみたいと思います。
リーダーには特別な資質が必要なのか:特性論
リーダーには、一般の人とは異なる優れた資質や特徴が必要だという考え方があります。
このような考えに基づいて、リーダー個人の特性明らかにしようとする多くの研究が行われてきました。
研究結果は一貫せず、リーダーの個人の特性だけでは、リーダーシップの現象の一部分しか説明できないことがわかりました。
リーダーシップの効果は、リーダーの個人特性というよりも、リーダーが「どのように行動するのか」によって決まると言われています。
リーダーはどのように行動すべきか:行動理論
リーダーの個人特性に対する関心が薄れた後、リーダーの行動やリーダーが集団の中で果たす機能に注目する研究が盛んになりました。
そのような理論の一つに、三隅二不二が提唱したリーダーシップPM理論があります。
リーダーが果たす機能として、P(目標達成:performance)機能とM(maintenance)機能の2つがあります。
P機能は、集団目標の達成を促進する機能であり、メンバーを課題に取り組ませたり、指示を適切に与えたりするなど、仕事や課題に関連した行動が含まれます。
P機能には、課題のやり方を明確にし、どうすれば目標達成できるのかをメンバーに理解させる「計画P」機能と、メンバーを一生懸命に働かせて業績向上への圧力をかける「圧力P」機能があります。
M機能は、集団のまとまりを維持・強化する機能であり、メンバーが働きやすいように環境を整えたり、親身に相談にのったりするなど、メンバーの心情に配慮する行動が含まれます。
この2機能をリーダーが普段どの程度果たしているかによって、リーダーシップは4タイプに分類されています。

出典 リーダシップ行動の科学(改訂版)有斐閣
学校、職場、スポーツなど、さまざまな集団でリーダーのリーダーシップのタイプを測定して、検討した結果わかったことがあります。
どの集団でも、P機能とM機能の両方が強いPM型リーダーのもとで、最も業績や意欲が高く、事故率が低く、チームワークがよいことがわかりました。
すべてにおいて最も成績が低いのはpm型リーダーの集団でした。
目標をもつ集団でリーダーにP機能が求められるのは当然ですが、いつも課題の達成を第一に考えて行動していると、集団には徐々にストレスや緊張が生じ、最悪の場合は集団そのものが崩壊しかねないため、M機能によって集団のまとまりを維持することも必要になります。
P機能とM機能のいずれか一つだけが強くても有効なリーダーシップとはいえないのです。
状況をみて柔軟に対応することの重要性:状況理論
PM理論は、どのような状況でもリーダーが一定の機能を果たすことの重要性を強調しています。
しかし、一方で、集団が置かれた状況によって、同じリーダー行動の効果が異なる場合があります。
ハウス(House,R.J.)とデスラー(Dessler,G.)は、PM理論と違う通路ー目標理論で説明しています。
PM理論と同じようにリーダーの行動を目標達成(構造づくり)と集団理論(配慮)の2次元でとらえますが、その効果は集団で取り組んでいる課題の性質によって異なることを想定しています。
課題が複雑で、どうすれば目標達成できるのかが不明確なものである場合、メンバーは課題のやり方に戸惑うことが多いため、リーダーが明確に仕事の進め方を指示するなど、目標達成を志向した行動が効果的です。
一方、マニュアル通りに行動すれば誰でも達成できるような単純な課題の場合は、リーダーの目標達成行動の必要性は低いことになります。
このような単純課題の場合には、メンバーが課題におもしろみを見出せずストレスを感じやすいため、むしろリーダーが配慮的に行動したほうが、メンバーのストレス緩和、ひいては目標達成度の向上につながります。
この通路ー目標理論によれば、優れたリーダーシップとは、メンバーが仕事の目標を達成するための通路(道筋)を明確に示すことです。
メンバーが目標に向かう上で状況の中に欠けているものを補うこと、たとえば、仕事の手順がわかりにくいときは明確化することが、リーダーの役割なのです。
状況理論の中には、課題の性質のほかに、メンバーの能力と意欲の程度に注目したものもあります。
課題に対するメンバーの能力や意欲が低い場合は、リーダーが細かく具体的に指示を与える方が効果的ですが、メンバーの能力も意欲も高い場合は、リーダーはあまり口は出さず、仕事上の決定と実施をほぼ全てメンバーに任せるほうが効果的です。
能力も意欲も高いメンバーに細かく指示することは、「リーダーは私の仕事能力を信頼してくれない」と受け取ってしまう可能性があり、逆効果です。
状況を的確に判断できて、それに応じて柔軟に対応できることが、よきリーダーの条件といえるでしょう。
まとめ
リーダーによって組織の質は変わります。
みなさんの組織やグループはどうでしょうか。
理想のリーダーの条件は人それぞれですが、リーダーになったときは、客観的に周りをみて、臨機応変に対応する力が必要みたいですね。
でも、いきなりよきリーダーになるのは難しいと思います。
まずは、仲間の話しに耳を傾けて、ときには助けてもらいながらも、成長して、よきリーダーを目指すのもよいかもしれません。
参考文献
「よくわかる心理学(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)」