ユングは人の心をどうとらえたのでしょうか。
ユングの類型論を紹介します。
ユングとフロイト
ユング(Jung,C.G. 1875-1961)はスイスで生まれました。
バーゼル大学医学部を卒業した後、1900年からチューリッヒのブルクヘルツリ精神病院で働くようになりました。
ユングはベルクヘルツリで言語連想実験に打ち込み、ある刺激語が内的な葛藤を引き起こすコンプレックスに関わっているときには、連想が遅れるという現象に興味を持ちました。
1900年に、精神分析の創始者であるフロイト(Freud,S.)が出版した「夢判断」で、抑圧と名付けた理論が自分の発見した現象と一致することに気付いたユングは、1907年頃から、フロイトと親交を結ぶようになりました。
フロイトはユングを精神分析の後継者とみなすほどであったと言われています。
しかし1913年に、ユングとフロイトは見解の相違で決別してしまいました。
フロイトと決別してからのユングは、自分自身の無意識から生じる内的イメージと向き合いながら自己分析を続けました。
これらの体験は理論化されて、1921年に「心理学的類型」を出版しました。
外向的と内向的という一般的態度と、4つの精神状態からなる性格理論として出来上がりました。
ユングとフロイトとの無意識の考え方の違い
フロイトの無意識の考えは個人に限定されていましたが、ユングは無意識をもっと大きな意味のあるものととらえ、個人の経験を超越する普遍的無意識の存在を主張しました。
その領域は人類の共通した記憶やイメージのまとまりによって構成されているとし、まとまりについて元型と呼びました。
ユングの無意識の解釈

普遍的無意識はさまざまな「元型」によって構成されます。
元型とは、すべての人間に共通する心の中のイメージのことをいいます。

フロイトの精神分析や無意識について紹介していますので、よかったら参考にしてくださいね。
類型論(タイプ論)
ユングは、人間には外向(extravert)と内向(introvert)という2つの異なった態度のタイプがあると考えました。
外向的な態度では、関心や興味が主に外界の事物や人に向けられているのに対して、内向的な態度では関心や興味が内界の主観的素材に向けられています。
外向的な人は社交的で人づきあいがよく、さまざまな外的な事柄に興味を持ち、客観的(流行、しきたり、制度、道徳、理論など)に基づいて生活を送っています。
そのため、物事の表側と関わっているという意味において皮肉的になりやすかったり、自分の主観的な体験を軽視することによって、自分を見失ってしまいやすいという面があります。
一方、内向的な人は、親しく馴染んだ領域以外での関り方がぎこちなくなりがちで、内的な体験を外部に伝えるときに困惑を感じやすい傾向があります。
ユングは、一人の個人がこれら2つの態度のタイプのいずれか一方にはっきり分類できるものだとは考えていませんでした。
意識的な態度が外向的であれば、無意識的な態度はそれを補償するために内向的になります。
無意識的な態度は、その人にとって未分化で、意識的には制御することはできないので、幼児的な現れ方をしてしまうと考えられています。
もし、意識的な面だけ強調されすぎているなら、無意識の態度が幼児的で否定的な形で表面化してしまうのです。
このような意識と無意識がバランスをとっているという考えは、こころの補償作用といいます。
ユングの中心概念である自己やこころの全体性、もしくは個性化の過程につながっています。
機能のタイプ
2つの態度のタイプとは別に、人はおのおの最も得意とする機能のタイプをもっているユングは考えました。
機能のタイプとは、こころの活動形式であり、ユングは4つの根本機能に分けています。
4つの根本機能は、思考(thinking)、感情(feeling)、感覚(sensation)、直観(intuition)です。
- 思考は、ある法則にしたがって与えられた表象内容に概念的なつながりを見出す
- 感情は、ある表象内容に対して、それを受け入れるか退けるか、快-不快や好き嫌いなどの形で現れる価値を与える
- 感覚は、ある生理刺激を知覚に仲介する。五感を通して存在するものをあるがままの形で知覚する。
- 直観は、いわば無意識な方法で対象を知覚・把握する働き。あるがままの対象の属性を超えた可能性に到達する
4つの機能のうち、感覚と直観はまず何かを自分の内に取り入れる機能(非合理機能)であり、思考と感情はそれらをもとにして何らかの判断を下す機能(合理機能)です。
また、思考と感情、感覚と直観は対立関係にあり、一方が主機能を担っているとき、他方は劣等機能となります。
ここで「劣等」というのは、その人にとって未分化で意識的に使うことができない機能だという意味です。
使えないから表に出ないわけではなく、あまり適応的でない形で突出してくることがあります。
2つの態度のタイプと4つの機能のタイプが組み合わせることによって、ユングは8つの性格タイプを描いています。
たとえば、外向的思考型は一般的に受け入れられている考え方を枠組みとして、知的に判断しようとします。
実際的な問題について具体的に対処していくことが得意ですが、その傾向が行き過ぎてしまうと、感情が未分化なままとなり、自分についても他者についても現実的な狭い枠の中に押し込もうとしがちになります。
その人によって意識的なあり方は、態度の方向や主となる機能の違いによってさまざまです。
ユングは人の心には意識的なあり方の偏りを正して心の全体性を実現しようという働きがあると考え、個性化の過程と呼びました。
ユングの類型論
「外向的」と「内向的」に性格を分けて、この2つをさらに4つの機能のタイプに分類しました。


まとめ
ユングの考えは、私は難しいと感じました。
タイプを知れば、得意な機能、未分化で意識的に使うことができない機能がわかります。
自分らしく生きるために、自分らしい自分を知るのに、ユング心理学に触れてみませんか。
参考文献
「よくわかる心理学(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)」
「面白いほどよくわかる!他人の心理学」
「史上最強カラー図解プロが教える心理学のすべてがわかる本」