普段、生活をしていて気分が落ち込むことは誰にでもあると思います。
また、ストレスを感じたり、不安になったりすることもあると思います。
その気分の落ち込みやストレス、不安といったものが、期間が長くなったり、ひどくなれば、健康を害したり、人格にまで影響する場合があります。
誰にでもなる可能性があるこころの病、「抑うつ」「不安障害」「双極性障害」「抑うつ障害(気分障害)」「パーソナリティ障害(人格障害)」について紹介します。
抑うつとは
抑うつとは、幅広く使われる言葉です。
- 抑うつ気分
- 抑うつ症候群
- うつ病
抑うつは、この3つの意味で使われます。
抑うつ気分は、悲しく、憂うつになる、滅入った気分のことです。
抑うつ症候群は、抑うつ気分と一緒に生じやすい心身の状態で、喜びや興味の喪失、疲れやすさ、自信の喪失、自責感、希死念慮、集中困難、イライラ、食欲・体重の変化、睡眠の変化などがあります。
うつ病は、抑うつ気分や抑うつ症候群が継続している期間や症状の程度によって、うつ病に診断される場合です。
抑うつ生成に関する要因
抑うつの生成には、さまざまな要因が複雑に関連しあっていると考えられています。
生物学的な要因
内因性の抑うつが存在することから、生物学的要因が関与している事例があると考えられています。
神経伝達物質のセロトニンとノルアドレナリンなどモノアミンの関連が研究されています。
心理的要因
几帳面、まじめ、正直で凝り性、正義感や義務感が強く、勤勉で他者への配慮のある執着性格、あるいはメランコリー親和性という性格傾向が関与していると考えられていました。
また、近年では、神経症傾向、損害回避傾向、低い自己効力感や自尊感情、対人的敏感さなどが、抑うつと関係があると考えられています。
ただし、質問紙でパーソナリティと抑うつを測定した場合、気分が落ち込んでいるのと、自己評価も否定的になりやすいので、抑うつとパーソナリティの因果関係を測定しているかどうかは、慎重に考える必要があります。
社会的要因
経済的・職場的な困難や、近親者の死、転校や引っ越しなどの生活上の出来事などの変化では、新しい適応が必要になり、適応がうまくいかないと抑うつになります。
学校や職場でのいじめなどの経験、家庭内での不和なども要因として考えられます。
身体的な要因
身体疾患や過労、睡眠の不足などは抑うつの発症の要因となります。
産後も抑うつの発症が高いことからも、妊娠、出産、月経、更年期などホルモンの変化の関与があると見られています。
抑うつ生成の認知的な特徴
抑うつになりやすい人は、自己に関する情報の認知に特徴があると考えられます。
ベック(Beck,A.T.)は、否定的な自動思考により、否定的な出来事があったときときに、さらに否定的なバイアスがかかった方法で解釈すると考えました。
たとえば、「おはよう」という挨拶に返事を返してもらえなかったために、「みんなが私を認めてくれない、私はダメな人間だ」と自動思考し、抑うつになると考えました。
最近は、抑うつの性差やその他の心理的な困難、不安や行動障害などとの関連を併せて説明する、より精緻な一般的認知脆弱-ストレス交互作用モデルが提案されています。
否定的な出来事が生じた後は、誰でも否定的な感情が生じるものですが、たいていは気晴らしや気分転換で解消されます。
しかし、認知的な脆弱性をもつ人は、この最初の否定的な感情が持続、増加すると考えられています。
認知的な脆弱性とは、否定的な出来事を繰り返し思い出したり、自己の否定的な側面に注意を集中することや、否定的な出来事の後に自己注目し、それが持続するスタイル(自己投入)、否定的な原因を自分の安定した側面に求める傾向があります。
たとえば、テストの点数が悪かったときに、「今回は勉強しなかったから点数がとれなかったけれど、今度がんばろう」と、テストの結果を一時的で変容可能な結果ととらえずに、「自分はいつで点数がとれず、能力がない」と考えることです。
あるいは、物事を完璧にしないと気がすまない完全主義志向なども特徴です。
また、認知的脆弱性は、領域特殊性を考慮する必要があり、否定的な出来事が各自の発達段階や性差に応じた敏感な領域(仲間関係、成績、体形など)で生起した場合に、他の領域で起こったときよりも抑うつの増加に結びつきやすいと考えられています。
たとえば、思春期以降の女性が、男性に比べ抑うつになる傾向が高いのは、ホルモンの変化などの他に、抑うつへの認知的脆弱性や否定的な事象に遭遇する、遭遇したと感じる頻度が男性より高いと言えます。
ブルーマンデーについて
ブルーマンデーは日本では、「サザエさん症候群」とも呼ばれています。
日曜日の夜になると明日が憂うつになることをいいます。
ブルーマンデーになる人はどんな人?
日曜日になると、明日からの学校や仕事のことを考えると、気分が乗らないというか、やる気がでないと感じる人は多いといわれています。
この現象は「ブルーマンデー」と呼ばれています。
ただし、すべての人がブルーマンデーに陥るというわけではありません。
特定の人だけが、月曜日に心理的な落ち込みに悩まされるのです。
どんな人にブルーマンデーの症状がみられるかといいますと、ブルーマンデーの現象を信じている人といわれています。
単なる思い込み?
イギリスのセント・ジェームズ大学のガイルズ・クロフトは実験をしました。
実験参加者に、2週間にわたって、日々の気分の変化を測定してもらうことをお願いしました。
その一方で、「あなたはブルーマンデーを信じていますか?」「それとも単なる神話にすぎないと思いますか?」といった質問もしました。
実験の結果は、確かに、月曜日には、他の曜日には見られない気分の落ち込みが見られたのです。
ただし、ブルーマンデーを信じている人だけでした。
そんなものはもともと知らない人や、信じていない人には、月曜日だからといって大きな心理的な気分の動揺や落ち込みは見られなかったのです。
やはり、ブルーマンデーは本人の思い込みによるものだといえそうです。
ブルーマンデーの予防と対策
「月曜日には、どうも気分が乗らないんだよな」と考えるから、本当に気分が落ち込んでしまうのです。
だったら、考えないようにすれば、ブルーマンデーに悩むことから防ぐことができるでしょう。
「病は気から」という言葉があります。
考え込まないように日曜日は夜更かしせずに早めに就寝するや、月曜日も他の曜日と変わらないと思う、といった感じに考え方を変えてみてはいかがでしょうか。
あるいは、月曜日に自分にご褒美や楽しみを設定するのも良い方法です。
たとえば、月曜日は自分の好きなごはんやスイーツを食べる日にするなどです。
月曜日に楽しみがあれば、ブルーマンデーに悩むことがなくなるでしょう。
抑うつのまとめ
抑うつは、さまざまな要因でなります。
何かおかしいなって感じたら、専門の医療機関やカウンセラーに相談するようにしてくださいね。
ただ、自分では気づかないこともありますので、周りの人から、心配されるようでしたら、素直に聞いて、専門の医療機関やカウンセラーに相談してください。
自分ひとりで解決しようとして、症状が悪化することもありますので、誰かを頼ること、頼っていいんだという気持ちを忘れずに、日々の生活を送りましょう。
不安で不安でたまらない病気「不安障害」
たとえば、試験の前の日は、不安で眠れなくなるや、就職や転職でうまくできるか心配になるなど、このような経験はありませんか。
何らかの不安を感じて生活していませんか。
このような症状が長い期間本人に大きな苦痛を感じさせたり、日常生活に支障が出てくる場合は、病的な不安と考えられ、「不安障害」と診断されることがあります。
不安障害は、全般性不安障害とパニック障害といった不安が主症状となるものと、広場恐怖、社会恐怖、単一恐怖、強迫性障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害といった自分の行動を制御する過程で不安が生じるものがあります。
人それぞれある不安障害
全般性不安障害は、人生のさまざまな不安を敏感に受けるために、深刻で慢性的な不安に悩まされます。
全般性不安障害に対してパニック障害は、圧倒的な急性の不安や死の恐怖、動機、頻脈、息苦しさ、過呼吸などに襲われるパニック発作を体験し、パニック発作がおさまった後も、この発作が頻発に起こったり、「また起きるのではないか」という予期不安が起こります。
広場恐怖は、人ごみやバス、電車など密閉された空間などを恐れるもので、外出が困難になることがあります。
社会恐怖は、人前で自分が思い描くような存在でありたいと願うあまり、うまく行動できないのではないか、人前で恥をかくのではないかと恐れ、人が集まるような場面を避ける恐怖症です。
単一恐怖は、特定の物、犬など動物、高所といった場所、暗いといった場所を恐れるものです。
強迫性障害は、不安を引き起こす嫌な考え、イメージ、衝動が繰り返し侵入する強迫観念と、その不安を軽減するために行わずにはいられない強迫行為があります。
本人は、このよううな考えや行為をやめたいと思っているのにやめられないのが特徴です。
急性ストレス障害は、心的外傷(トラウマ)が原因とする急性なストレスによってもたさられる障害を急性ストレス障害といいます。
外傷後ストレス障害は、急性ストレス障害の症状が1カ月以上持続するときに外傷後ストレス障害といいます。
フラッシュバックのように、外傷的出来事が鮮明にイメージされることや、外傷体験を思い出させるような場所、対象を避けるようになること、睡眠困難や強い警戒心など強い不安症状などがみられます。
不安障害といっても、さまざまな障害があり、仕組みもそれぞれ異なります。
パニック障害について
パニック発作を起こしやすい人には遺伝的、生物学的(大脳辺縁系のセロトニン欠乏など)な脆弱性があると考えられています。
もともと発作を起こしやすい身体的な要因があるといえます。
しかし、それだけではなく、自分の身体感覚に敏感で、身体的な変化を否定的に解釈しやすいという認知的な要因もあります。
たとえば、突然の筋肉の緊張や動悸を「心臓発作が起きる」「死んでしまう」など解釈してしまうのです。
こうした身体的、認知的要素が作用しあって、パニック発作が起きやすくなり、ますます発作を恐れるようになります。
そのために、過去に発作が生じた場所や起こしそうな場所を意図的に避けるようになります。
生活や活動範囲は狭まりますが、結果的に不安が低下し、発作は起こりません。
このことで、さらに回避行動が強化されることになるのです。
これが、パニック障害に広場恐怖を併発した状態です。
安心感があることで、パニック症状の起き方にどのような変化をもたらすのかを研究したのがあります。
実験にパニック症状を生じさせるため、パニック障害の患者が二酸化炭素を吸引したときに、安心できる人が一緒だった場合とそうでない人との場合で違いを観察しました。
結果は、安心な人が一緒だった場合の方が、そうでない人とよりも、パニックの情緒的、認知的、生理的症状が少ないことがわかりました。
安心感があるのと、ないのとでは、パニック症状に違いがあり、安心できることが大事になります。
パニック障害の治療について
パニック障害の治療として、「パニック発作では死ぬことはない」ことを知り、病気について正しく理解することが大切です。
薬物療法により発作自体を消失させることが可能であるといわれていますが、それでも広場恐怖が持続する場合は、認知行動療法が有効です。
不安障害に共通していえることは、病気に対する正しい知識を本人が理解した上で治療を行い、基本的には、薬物療法や心理療法が有効とされています。
重症化するとうつ病も併発することもありますので、適切で早期の治療が大切になります。
強迫性障害について
外出先で、ふと「家の鍵をかけてのかな」と気になることはありませんか。
誰しも、意識せずに行った行為について、あとから心配になることはあります。
ところが、鍵をかけたか不安になり、何度も確認を繰り返して外出が遅れる、あるいは外出できなくなってしまうことがあると、強迫性障害の可能性があります。
強迫性障害は、不安障害に分類される病気のひとつです。
病状は、不安が繰り返し心の中に浮かび、強い苦痛を起こす強迫観念と、その衝動に従って不安を打ち消すために行われる強迫行為があります。
この2つがそろった状態のときに強迫性障害と診断されます。
多少は気になっても、すぐに忘れてしまうような不安が、強迫性障害の場合は繰り返し生じ、それに反応した強迫行為をやめることができません。
本人も「こだわりすぎだ」と気づいているのですが、こだわらずにはいられないのです。
症状がひどくなると、日常生活に支障をきたし、引きこもりの原因になることもあります。
強迫性障害の例
強迫性障害は、不安が心の中に繰り返し浮かび、それを打ち消すために何らかの行為を行うという不安障害です。
加害に対する不安
他者を傷つけてしまうのではないかという過剰な不安。
ホームで人を誤って突き落としてしまうのではないかと感じたりする。
不潔に対する不安
汚染に対する不安から、過剰に洗浄を繰り返す。
外出先から戻ると、すぐにシャワーを浴び、衣服を全部着替えないと気がすまないなど。
回避
強迫的な状況を引き起こす行動を避けるようになる。
鍵をかけたかどうかが不安になる人は引きこもりがちになる。
正確さ・順序への要求
モノの位置が必ず左右対称で、まっすぐに並んでいないと気がすまないなど、モノの位置などにこだわる。
強迫性障害の治療について
強迫性障害はほかに、誰かを傷つけてしまうのではないかと感じる加害不安や、逆に、自分で自分を傷つけてしまうのではないかと感じる被害不安、大切なものを誤って捨ててしまうのではないかと感じる保存不安などがあります。
1994年に行われた4大陸7か国での調査によると、強迫性障害の人は、人種を問わず全人口の約2割前後いるとわかっています。
原因ははっきり解明されていませんが、脳内の神経伝達物質であるセロトニンが関係するのではないかと考えられています。
近年は、強迫性障害の研究が進み、薬物療法などにより日常生活に支障がないレベルまで症状が改善できるようになりました。
まずは、専門の医療機関、精神科、心療内科に相談してみることをおすすめします。
不安障害のまとめ
不安に思うことは誰でもあると思います。
ただ、長い期間続いたり、日常生活に支障がでてくるようであれば、専門の医療機関に相談することをおすすめします。
正しい知識、治療をして、不安障害で悩まない生活をしましょう。
仕事は心配性な人ほどうまくいく?
心配性な人は仕事がうまくいくといわれています。
それは、準備がしっかりできて、大失敗をしないからだそうです。
心配がゆえに隙のない仕事ができる
イギリスのゴールドスミス大学のアダム・パーキンスは、心配性ほど勝者になりやすいという論文を発表しています。
心配性の人は、気苦労ばかり多くて、いい結果をあげれないと思われるかもしれませんが、どうも違うようです。
パーキンスが、あるフィナンシャル会社でおこなった調査では、心配性の人ほど、仕事の成績が高い傾向にあることがわかりました。
それは、自分の心配を打ち消すために、他の人ならやらないことまできちんと準備するからです。
しっかり事前に準備をしておかないと安心できないことが、良い仕事ができるわけになります。
「段取り八分(ぶ)、仕事二分」という言葉があります。
仕事は、準備といった段取りがしっかりできていたら、八割は仕事は完了しているといわれています。
段取りがうまくできる、良い仕事ができるコツではないでしょうか。
心配性なら大きな失敗はない
たとえば、受験生が試験に合格できるか心配すると、勉強をしっかりして試験に備えようとしますよね。
その結果として、合格といった成果や、思い通りの結果にならなくても、次への対策を練ることができます。
一方、気楽に考えて勉強をあまりせず失敗した場合は、次も同じ失敗を繰り返すのではないでしょうか。
失敗することは悪いことではありません。
積み重ねた努力の過程や失敗を次にいかすことができるかが大事です。
心配性であれこれ心配しながら前に進むことは良いことです。
周囲の人から、「気が小さい」といったことを言われるかもしれませんが、心配性はあなたにとって「強み」です。
ただ、心配性が強くなりすぎると、何もできなくなりますので気を付けたいところです。
もし、不安や心配にとらわれてどうしようもなくなったときは、専門の医療機関に相談してください。
決して一人で抱え込まないようにしてくださいね。
双極性障害、抑うつ障害(気分障害)とは
気分障害とは、精神疾患の診断基準のDSM-ⅣーTR(精神疾患の診断・統計マニュアル)で、躁症状の有無から、双極性障害とうつ病性障害としていました。
DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)で「双極性障害および関連障害群」と「抑うつ障害群」という独立しているものとして2つに分かれ分類されています。
一般にうつ病とされる大うつ病性障害の症状は、抑うつ気分か興味や喜びの喪失を含めて5つ以上の症状が2週間以上続く状態をいいます。
症状については、よく眠れるか、いつもより早く起きるか、食欲が減ったや増えたか、朝調子が悪くて夕方気分が良くなるか、身体がだるいか、休みに好きなことができるか、仕事や勉強や家事などができなくなっていないか、強い焦燥感や罪責感、死に対する思いなどが症状です。
躁状態は、おしゃべりになったり、夜眠らなくても元気で、どんなことでもできるような気がして新しいことを始めたり、高額な買い物をするなどの症状があります。
子どもは、落ち込んでいるといった精神症状が前面に出ず、胃腸の症状や頭痛・肩のこりなどの身体症状としてでることもあります。
抑うつの種類
症状とその期間から気分障害と診断されますが、その症状は同じではありません。
特に、抑うつの中核的な症状があり抗うつ薬の効く内因性のうつ病と、中核症状があまりはっきりせず抗うつ薬が効かないこともあります。
いわゆる抑うつ神経症では、その症状の成立や治療法の選択が異なります。
本人への援助
抑うつの症状では、死への思いの確認が必要です。
死への思いが強いほど、抑うつが重篤である場合は入院で、保護的な環境のなかで薬物療法を用いることが不可欠です。
治療は、心身を休めながら薬物療法、支持的な心理療法、認知行動療法があります。
抑うつの状況が生じたことに対する認知行動療法、行為と結果とそこに介在する認知を特定し、気づきを書きとめるアプローチは、効果が証明されています。
薬物療法を終えた後も、認知行動療法を経験した方が抑うつの再発が少なくなると成果があります。
躁状態は、本人は気分がよいので症状として訴えることはなく、気づかないことも多いです。
買い物をしすぎたり、周囲の人とトラブルを起こすことで、躁状態が明らかになることがあります。
家族はどうするのか
家族が双極性障害や抑うつ障害になった場合、家族へのかかわり方を心理的に知っておくことが重要になります。
今後の見通しや、心身を休めるための家族の配慮や社会的資源の利用などを話し合う必要があります。
たとえば、学校や仕事を休むなどの社会的な活動の制限が必要になること、家族の心身への負担が増えることがあります。
また、回復の過程で、元気そうになったのに家でゴロゴロしているだけで、家事や勉強、仕事につながらないと、家族が不満をもつことがあります。
逆に、過剰に面倒をみたり、気分障害の家族の代わって働きに出たりして、家族も抑うつになることもあります。
抑うつになった家族に向き合うことは大切ですが、誤った方法で関わると、抑うつの症状がひどくなったり、周りの家族も抑うつになることが考えらます。
だからこそ、専門機関に相談することをおすすめします。
双極性障害、抑うつ障害のまとめ
双極性障害や抑うつ障害の回復には、先が見えなくて焦りますが、焦っても症状はよくなりません。
薬物療法や認知行動療法といった心理療法を用いて、少しずつ症状を改善していくことが大事になります。
パーソナリティ障害(人格障害)とは
パーソナリティ(人格)とは、「その人の人間性、人間としてのあり方」といわれています。
では、「パーソナリティ障害」とは、その人の人間性すべてに問題があるということでしょうか。
もちろん、そんなことありませんよね。
「人格障害かもしれないーどうして普通にできないんだろう、磯部潮、光文社新書」によると、「人格障害は心の病気ではあるが、精神病ではなく、自己の存在が危うくなったり現実検討能力に著しい障害があるわけでない」とあります。
そして、「病的な人格ではなく、異常な性格としてとらえるべき」ともあります。
つまり、精神病ではなく、「社会のルールや対人関係のルールが守れなかったり、同じ価値観や基準を共有しにくい人たち、そのために人との関係や社会の中でトラブルや問題が生じやすい人たち」ということです。
このような定義でいうと、みなさんの周りに思い当たる人はいませんか。
たとえば、恋愛関係がいつも不安定な人、いつも一緒にいないと不安で、相手の気を引くために大量のメッセージをスマートフォンのメールやSNSに送りつけたり、返事が遅いと感情的に爆発して自暴自棄な行動をとる人や、いるも自分が一番でないと気が済まなくて、相手を蹴落とすことばかり考えている人や、仕事について自分に自信がなくて、些細なことをきっかけに仕事を辞める人や、疑り深くいつも人のことを悪くいって孤立する人などいませんか。
DSMー5(精神疾患の診断・統計マニュアル)には、パーソナリティ障害をカテゴリーに分けています。
A群パーソナリティ障害
- 猜疑性パーソナリティ障害
- シゾイドパーソナリティ障害
- 統合失調型パーソナリティ障害
B群パーソナリティ障害
- 境界性パーソナリティ障害
- 反社会的パーソナリティ障害
- 自己愛性パーソナリティ障害
- 演技性パーソナリティ障害
C群パーソナリティ障害
- 回避性パーソナリティ障害
- 強迫性パーソナリティ障害
- 依存性パーソナリティ障害
A群の特徴として、猜疑性パーソナリティ障害は、思い込みが強く疑り深く、シゾイドパーソナリティ障害は、孤独でよそよそしい、統合失調型パーソナリティ障害は、奇妙な考えや幻覚妄想が出現するのが特徴です。
猜疑性パーソナリティ障害の症状例
- 他人にばかにされたと気にする
- 周囲のできごとに敏感に反応する
- すべてを悪意に受け取る
- 被害意識が強く、一方的に意味づけをする
- 思い込みが強い
シゾイドパーソナリティ障害の症状例
- 無関心、無感動
- 他人との交流が少ない
- 賞賛や批判に関心がなくなる
- 人付き合いを好まず、さびしいと感じない
統合失調型パーソナリティ障害の症状例
- 非社交的でマイペース
- 対人関係は必ずしも消極的ではない
- 非現実的な考え方をする
- 考えが際限なく広がる
B群の特徴として、境界性パーソナリティ障害は、情緒的に不安定で衝動性が高く、対人関係も持続せず自己破壊的である、反社会的パーソナリティ障害は、法律や社会規範に合わず、反抗したり非行や犯罪に走りやすい、自己愛性パーソナリティ障害は、プライドが高く、他者を見下し他者からの賞賛を求める、演技性パーソナリティ障害は、周囲の注意を引くためにさまざまな行動を繰り返す行うといった特徴があります。
境界性パーソナリティ障害の症状例
- 感情が不安定
- 空虚感をつねに抱いている
- 気分の高揚と落胆をくり返す
- 自傷行為をくり返す
- 自殺するといって周囲に関心を求める
- 非難されると激しく怒りだす
反社会性パーソナリティ障害の症状例
- 無責任な態度をとる
- 社会のルールを無視した態度をとる
- 激情的で、すぐに暴力をふるう
- 罪の意識がなく、罪を犯しても気にしない
- トラブルを起こしても、自己正当化する
- 他人を非難する態度をとる
自己愛性パーソナリティ障害の症状例
- 賞賛されたい強い欲求をもつ
- 職場や家庭で円滑な人間関係が崩れる
- 自分は特別と思い込んでいる
- 見捨てられることを恐れる
- 他人に依存してまとわりつく
演技性パーソナリティ障害の症状例
- 感情がころころ変わる
- 自分が注目されていないと気がすまない
- 外見の魅力に執着して利用する
- 他人や外部からの影響を受けやすい
- 芝居がかった態度、オーバーな表現をする
C群の特徴として、回避性パーソナリティ障害は、社会から引きこもったり責任を回避するなど、自分に自信がない、強迫性パーソナリティ障害は、さまざまな物事へのこだわりが強く融通が利かない、依存性パーソナリティ障害は、人から離れることが非常に怖くて、人に頼り、人を求めてしまう特徴があります。
回避性パーソナリティ障害の症状例
- つねに不安で、緊張している
- 仕事場などで過剰に引っ込み思案になる
- 身体的、精神的に傷つくことを恐れる
- 自分には魅力がなく劣っていると思い込む
- 好かれている確信がないと、人とかかわれない
強迫性パーソナリティ障害の症状例
- 規律や秩序を徹底して守る
- 完璧主義で細部にこだわる
- がんこで融通がきかない
- 自分のやり方やルールを他人に強要する
- 娯楽や人付き合いを犠牲にする
依存性パーソナリティ障害の症状例
- 生活上の重要事項まで他人に決めてもらう
- 他人に対して従順にふるまう
- 依存している相手に反対意見がいえない
- 他人の望みを、自分の望みのようにふるまう
- 不安感、無力感に襲われる
パーソナリティ障害の種類によって治療方法はさまざまあります。
主なものとして、心の仕組みや心の中で起きていることを解き明かしていく力動的精神療法や、批判的見方でなく、より適応的な対処を評価していく支持的技法、行動や感情表出の裏にある歪んだ考えや認知をより適応的なものに変えていくための認知行動療法などがあります。
正しい知識と治療をすれば改善できますので、専門の機関に相談することをおすすめします。
パーソナリティ障害の人たちとの関係について
パーソナリティ障害の人たちとうまくつきあっていくことについて考えてみます。
たとえば、相手から無理難題を押し付けられたり、とても対処できないような要求をされたり、相手の言動にすっかり振り回されそうになったときはどうでしょう。
できるだけ冷静に自分を振り返り、自分ができる範囲を見極め、できないことについてはできないときちんと断るといった明確な意思表示や、相手との関係で責められたり責任をとらされそうになっても、必要以上に責任を引き受けない(自分のせいにしない、自分を責めない)ことなどです。
パーソナリティ障害のひとたちとの関係で「無理をしないこと」がとても大切です。
パーソナリティ障害のまとめ
パーソナリティ障害といっても、さまざまありますが、人間関係を築いては壊して、築いては壊していく傾向があります。
お互いに理解し合うのは難しいですが、気長にお付き合いしていくことができれば、ある程度安定した人間関係になるのではないかと思います。
参考文献
「よくわかる心理学(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)」
「身近にあふれる心理学が3時間でわかる本」
「面白いほどよくわかる!他人の心理学」
「やさしくわかる精神医学」