ゲシュタルト心理学の成立や研究について紹介します

pcnote心理学

ヴントによって実証科学としての心理学が始まりました。
ヴントの考えが広まることによって批判する考えがでてきました。
その中の一つゲシュタルト心理学について紹介します。

ヴントの心理学については「いつ心理学はできたの?心理学」で紹介しています。

ゲシュタルト心理学の成立について

批判するもとになったヴントの心理学は、意識の構成要素は純粋感覚と単純感情であり、その複合体として意識の成り立ちを説明できるとする構成主義の立場をとりました。
ゲシュタルト心理学は、ヴントの構成主義を批判し「心理現象は要素に還元するべきではなく、一つのまとまりとしての全体をそのまま研究するべきだ」と主張しました。
この「全体としてのまとまり」を重視するゲシュタルト心理学の先駆けになったのが、エーレンフェルスの「ゲシュタルト性質」です。

エーレンフェルスはメロディーを例にあげて、「ゲシュタルト性質」の特徴を説明しました。
「ヴントの構成主義によれば、純粋感覚や単純感情などの要素が同一であれば同一の意識体験が生じるはずであり、逆に要素が異なれば同一の意識体験が生じるはずはない。ところが、あるメロディーを構成する個々の音をすべて上げるか下げるかして移調すると、メロディーの構成要素はすべて変わってしまったにもかかわらず、全体としてのメロディーは変わらない。」

これがエーレンフェルスのいう「ゲシュタルト性質」で、人間が物事を認識する際の基本的な特徴といえます。
たとえば、「2対3」の関係は、「4対6」に置き換えても同様に保持されます。
これが、エーレンフェルスの「ゲシュタルト性質」です。

1910年にゲシュタルト心理学の創設者の一人であるウェルトハイマーが、フランクフルト大学に着任しました。
さらに、ケーラーとコフカが加わり、3人で連携して研究が始まりました。
この時にゲシュタルト心理学は成立しました。
その後、3人がベルリン大学に移り、レヴィンが加わって、強力な研究グループができました。

ゲシュタルト学派の研究ってどんなっものだったのか

ゲシュタルト学派の代表的な研究を紹介します。

仮現運動の実験

ウェルトハイマーは「全体は要素の足し算ではない」というゲシュタルト心理学の主張を実証するために実験をしました。

光の線分aとbをそれぞれの位置に固定して、一方の線分を点滅させた後に、適切時間間隔をとって、他方の線分を点滅させると、矢印の方向への光の運動が知覚されます。
この場合、光の線分は実際には動いていません。動いていないにもかかわらず、光の線分の運動が知覚され、しかも、最適の時間間隔で線分aと線分bを点滅させると、静止した線分aも線分bも見えないで、ただ一方の線分から他方の線分への運動だけが見えるのです。

仮現運動と呼ばれる現象は、全体は要素の複合体だと考えるヴントの構成主義では説明できません。
もし「全体は要素の足し算」なら、静止した線分aと線分bの要素感覚は存在しない(=0)ので、全体(運動の知覚≠0)=要素a(=0)+要素b(=0)という等式が成立することを説明できないということです。

出典 大山正(編著)2007 実験心理学ー心と行動の科学の基礎 サイエンス社

洞察による問題解決

ケーラーは、行動主義の心理学のS-R連合理論に対して、研究結果を根拠にして批判しました。
研究の内容は、チンパンジーを檻の中に入れて、手の届かないところに果物が置いておいて、どのようにして取るかです。
チンパンジーは道具を使わないと果物は取れません。
檻の中に果物に届かない短い棒を、檻の外に果物まで届く棒を置きました。
チンパンジーは果物を取れたのか、そして、どのような結果になったのでしょうか。

ケーラーの観察によると、チンパンジーは、短い棒で長い棒をたぐりよせて、長い棒を使って果物を取ることができました。
果物を取るにあたっては、試行錯誤ではなく、瞬間的なひらめきで果物を取ることができました。

ケーラーは、この観察の結果から、学習にとって重要なのは、練習の反復によって刺激(S)と反応(R)の連合を強めることではなく、問題場面の全体的構造の洞察や理解といった能動的な認知過程であると主張しました。

出典 宮孝一(訳)1962 類人猿の知恵試験 岩波書店

まとめ

ゲシュタルト心理学とは、知覚は単に対象となる物事に由来する個別的な感覚刺激によって形成されるのではなく、それら個別的な刺激には還元出来ない全体的な枠組みによって大きく規定され、全体的な枠組みあたるものがゲシュタルトです。
ゲシュタルト心理学の考え方は社会心理学、知覚心理学、認知心理学などに受け継がれ、コーチングやフォーカシングなどに影響しています。

参考文献
「よくわかる心理学(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)」