営業や交渉で有利に進める技に、小さい頼み事をして次の頼み事を受け入れやすくする「フットインザドア」と、大きな頼み事をして断られてから本当の頼み事を受け入れてもらう「ドアインザフェイス」があります。
「ドアインザフェイス」についてはこちらの「ドアインザフェイス」もあわせてご覧ください。
今回は、「フットインザドア」を紹介します。
頼みごとを断られるには理由がある
人に頼みごとするとき、あなたはどうしていますか?
おそらく普通に頼みごとされていると思います。
家族や仲の良い友人なら、前置きなしにズバッと頼みごとすれば、だいたいのことは聞いてくれます。
ですが、仕事での頼みごと、営業や交渉で断られると悩んでいませんか。
営業なら商品を売ってなんぼの世界ではありますが、お客さまにいきなり、「この商品いかがですか」と言ったとしても、まず売れないです。
商品を売る前に、お客さまと信頼関係をつくったり、商品の良さを知ってもらう必要があります。
きっかけ作りに「フットインザドア」は有効な手法の一つです。
まずは商品を売るよりも話をするきっかけをつくる、頼みごとを段階的にして、徐々に本当に頼みたかった事を受け入れてもらえるように、段取りをしましょう。
フットインザドアとは?
フットインザドアとは、最初に小さな要求を受け入れてもらえれば、その後の本命の要求にも受け入れてもらいやすくなる、心理学に基づいた交渉術です。
フットインザドアは、「段階的要請法」とも呼ばれます。
フットインザドアという由来は、セールスマンが訪問先で「お話だけでも」と、ドアに足を挟み込む様子が由来となっています。
少しずつハードルを上げる方法
マサチューセッツ大学のクリス・アレン准教授がおこなった実験があります。
実験内容は、最初に「買い物についての質問に答えていただきますか?」と申し出て、承諾してくれた人に対して「つきましては、質問用紙をご自宅にお送りしてよろしいでしょうか?」と第二のお願いをするものでした。
この場合の承諾率は、67.3%と高い結果になりました。
では、最初からいきなり「質問用紙を郵送していいですか?」と聞いたときの承諾率は22.2%という低い結果になりました。
たとえば、いきなり「募金をお願いします」と頼まれても、多くの人はそのまま通り過ぎていきます。
最初に「署名だけでも」など低いハードルで頼めば、多くの人が承諾して、次のお願い「募金」がしてもらいやすくなります。
フットインザドアが有効な理由は?
フットインザドアが有効な理由は、「一貫性の法則」で説明できます。
一貫性の法則とは、決めたこと、行動などを一貫性をもたせようとする、人間の心理です。
人は無意識のうちに、態度をコロコロ変えると信頼を失ってしまうのを恐れて、一貫性を持たせようとします。
一度相手の頼みごとに同意した場合、その態度を一貫させようと、次の頼みごとも同意してしまう傾向があるため、フットインザドアは有効です。
一貫性の法則を用いた交渉術としては、「イエスセット話法」もあります。
イエスセット話法については「イエスセット話法」にまとめています。
ぜひ合わせてご覧ください。
フットインザドアの例
「フットインザドア」洋服を見てただけなのに編

へー今はこんな感じの服が流行ってるんかぁ

いらしゃいませ。
今日はお休みですか?

ええ、休みです。

今、ご覧になっていた服は当店の限定の服なんですよ。
試着されませんか?

うーん、時間もあるし試着するくらいならいいかな。
試着後

とてもお似合いです!

本当ですか?

本当にお似合いですよ。
今、試着されてる服は在庫があまりなくて・・・
いかがでしょうか?

(試着しちゃったし、似合ってるみたいなので買ってもいいかな)
はい、買います。
この場合は、試着してもらってから購入してもらうという段階を経ていますね。
いきなり「この服、買ってください」と言ってもなかなか買ってくれるお客さまは少ないでしょう。
洋服だけでなく、まずはモノを試してから購入への流れは体験されたことがあるかと思います。
まとめ
「フットインザドア」は、小さな要求から始めて、少しずつ要求を大きくする交渉術です。
「フットインザドア」は営業、販売など、さまざまな場面で利用できます。
少しずつ相手との距離を近づけて、頼みごとを受け入れてもらいましょう。
「フットインザドア」で注意してほしいことがあります。
「フットインザドア」をすれば頼みごとが必ず成功するものではありません。
あくまでも、成功する可能性が上がるものと考えてください。
参考文献
「一瞬で人を操る心理法則」