感情はどこから来るのか?キャノン=バード説とジェームズ=ランゲ説について

pcnote心理学

私たち人間はたくさんの感情を持って生活しています。
感情は、人間社会で生きていくために必要なものと考えられています。
感情がどこから来るのか、また感情が生じる過程について紹介します。

動物が生きていくために必要なもの

喜んだり、悲しんだり、怒ったり、笑ったりと、人間はさまざまな感情を持ちながら生きています。
感情の中でも、快・不快の感情や、恐怖や不安など、より原始的で本能的な感情を情動といって、感情と区別されることもあります。

情動は、人間をはじめ動物が生きるために必要な行動を促すためにあります。
たとえば、大きなハチが飛んできたとき、恐怖を感じるからこそ私たちは逃げるという判断ができます。

逆に、近づくものと言えば、おいしそうな料理や一緒にいて心地良い人に対しては快さを感じて近寄っていきます。

いわば、情動は動物の本能的な欲求にもとづいた環境適応の仕組みの一つと言われています。

情動を司るのは、脳の中にある大脳の奥の大脳辺縁系というところです。
一方、情動よりも高度な「せつない」「憧れる」「同情する」といった複雑な感情は、大脳を覆う大脳皮質という領域が司っています。
大脳皮質は哺乳類のみに見られるもので、人間は特に発達しています。

情動と感情の違い

情動

原始的な感情で、動物にも備わっていて、情動は急激に生じ、短時間で終わります。

情動の例

  • おいしそう
  • 怖い、不安
  • そばにいたい
  • 不快

感情

人間特有の複雑な感情で、感情は比較的長く持続します。

感情の例

  • せつない
  • 憧れる
  • 同情する
  • 懐かしい

闘争・逃走反応

強い感情を経験すると、身体にはさまざまな変化が生じます。
恐怖に遭遇したときの人間の反応を例にしてみていきましょう。

ハチを例にしてみましょう。
ハチに遭遇すると、ハチについて大脳辺縁系の扁桃体という部分が「恐怖」「不快」などと判断をして、どれくらい危険なのかを瞬時に判断します。
ハチが離れていった場合は、そのまま落ち着いてかまわないですが、もし近づいてくるようなら、戦うか逃げるのに適した体の状態にしないといけなくなります。

具体的には、交感神経が高ぶり、全身に血液や酸素を送り込むために心臓がバクバクと高鳴って息が荒くなり、瞳孔が散大し、胃腸の消化吸収の機能が止まるなどの生理的反応が起こります。

恐怖時の反応を闘争・逃走反応といい、生理学者のキャノンが提唱しています。

闘争・逃走反応(生理学者キャノンの説)

恐怖を感じるような外部刺激を受けると、視床下部が自律神経系に「非常事態モード」の指令を出します。

①ハチ発見!!

②扁桃体が感情を判断

③不快だと判断

④視床下部が自律神経系に指令を出す

⑤生理的反応が起こる

  • 心臓がバクバクと高鳴る
  • 息が荒くなる
  • 瞳孔が散大
  • 胃腸の消化吸収の機能が止まるなど

怖い映画や刺激の強い映画など、情動をかきたてる映画を観た後で、その内容を思い出すと扁桃体の活動が活発化したという実験結果もあります。

感情が生まれる過程

感情の発生する過程の理論は、「キャノン=バード説」「ジェームズ=ランゲ説」があります。
それぞれの説について紹介します。

キャノン=バード説

キャノン=バード説の説明するのに、足元に嫌いなヘビが出現したときの状況で考えてみましょう。

キャノン=バード説では、ヘビの存在を知覚した後、ヘビを見た視覚情報は脳の視床と呼ばれる部位を経由して、二手に分かれるとしました。
一方の視覚情報は大脳皮質に入って、「怖い」や「嫌い」などの情動を生み、もう一方は視床下部に入って心臓が高鳴るや息が荒くなる、瞳孔が開くなどといった生理的反応を引き起こすとしました。

つまり、キャノン=バード説によれば「怖い」という情動と、心臓が高鳴るなどの生理的反応は同時に起こり、互いにまったく連動していないということになります。
しかし、身体的変化が緩慢なため、結果的に感情が先に生じます。

キャノン=バード説によると、私たちは「怖いから震える」のです。
生理的反応と情動は脳と脊髄の中枢神経系の働きによって起こるという考えから別名「中枢起源説」と言われることもあります。

ジェームズ=ランゲ説

ジェームズ=ランゲ説では、恐怖の対象に出会うと、最初に心臓の動悸や瞳孔の散大などの生理的変化が起こり、それから情動が起こると考えています。

つまり、怖いから震えるのではなく、震えている自分を感じるから「怖い」という情動が起きるとされています。

体の反応を知覚することで心の状態を感じ取るというジェームズ=ランゲ説の考え方は、末梢起源説と呼ばれ、現代の脳神経科学でも支持されています。

また、ジェームズ=ランゲ説を踏まえ、心理学者トムキンスの顔面フィードバック仮説があります。

顔面フィードバック仮説は、たとえば気分が沈んでいるときにあえて表情筋を動かして笑顔になることで、大脳が「楽しい」と認識(誤認)し、心がそれにつられて明るくなるという考え方です。

つまり、楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなるのです。

顔面フィードバック仮説は、販売や営業の現場で仕事をしている人に向けて、接客サービス研修やセミナーなどの場面で、笑顔の重要性を説明する教材として利用されることが多いです。

「気のもちよう」の実験

心理学者のシャクターは、実験参加者にアドレナリン(興奮剤)を注射し、その後どんな感情を感じたのかを調査しました。

結果は、怒りっぽい人と同室だった実験参加者は怒りを感じたと答えました。
また、楽しそうな人と同室の実験参加者は楽しかったと答えました。
一方、注射の作用について説明を受けていた人は、「単に動悸や震えを感じただけ」と答えました。

この実験結果から、同じ生理的反応でも、大脳が状況をどう解釈するかで心の状態が変化すると考えられます。

まとめ

感情が生まれる説について「キャノン=バード説」と「ジェームズ=ランゲ説」を紹介しました。
どちらの説が正しいかどうかは私にはわかりませんが、感情が出たとき、自分自身でどうのようにとらえるかで、感じ方は変わると思います。

起こった出来事は変えることはできません。
失敗したことや良くないことであっても、考え方ひとつで前に進むことができます。
たとえば、失敗したのではなく、うまくいかない方法を知ることができた次は違う方法でやってみようといった具合に考え方を変えれば気持ちも変えることができます。

生活していて楽しいことばかりではありません。
自分で感情をコントロールできなくなってしまったときは、カウンセリングや心理療法を利用することをおすすめします。

参考文献

「史上最強カラー図解プロが教える心理学のすべてがわかる」