犯罪心理学で罪を犯す理由を考えてみましょう

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「魔が差す」という言葉があります。
ニュースで事件が報道され、犯人の動機に「魔が差した」と供述しているのを目にしたことがあるかもしれません。
犯人を知っている人のコメントで「あんなことする人には見えなかった」とあるように、普通の人が罪を犯してしまうことがあります。
犯罪に走ってしまうことは、犯人が異常な人格者であるからでしょうか?

きっかけがあれば誰もが罪を犯してしまう可能性があるのではないでしょうか。
今回は犯罪心理学について紹介します。

犯罪心理学とは

犯罪心理学とは、犯罪者の心理学的要因を探ったり、矯正や更生のための技術を開発することを目的とした学問です。

犯罪心理学の3つの領域

犯罪者は異常な存在とはいいきれない

犯罪心理学の創始者である精神科医のロンブローゾは、犯罪者には共通する身体的・精神的特徴があるとして「生来性犯罪者説」を掲げました。
しかし現在は、「生来性犯罪者説」は否定されていて、人を犯罪に至らしめる背景には社会的・心理的要因があり、なおかつ2つの要因が相互に作用している説が有力と言われています。

犯罪学者のハーシーは、「なぜ多くの人は犯罪をしないのか」という視点から犯罪の原因を追究しました。
ハーシーによると、家族の存在や社会的信用など社会と繋がるきずなが弱まったときに罪を犯す可能性が高くなるとしました。
きずなの繋がりが弱くなると「魔が差す」という形で罪を犯してしまうと考えられます。

犯罪が起きるのは、必ずしも社会的・心理的要因がすべてだといいきれませんが、きっかけとしてはあると思います。
私が思うことは、1人で抱え込んで孤独にならないことです。
誰かと繋がっていることが大事であるのと、誰も相談する人がいない場合でも、カウンセラーなど頼ってみてはいかがでしょうか。
人を頼ることは決して恥ずかしいことではありません。

罪を犯して後悔するくらいなら、苦しくて惨めであったとしても、真っ当に生きた方が断然良いと思います。

人はなぜ罪を犯すのか

犯罪が起きやすい、起きにくい場所ってあるの?

都会のほうが犯罪の発生件数は多いのですが、全ての地域で、等しく犯罪が起きるのかというとそんなことはなくて、「起きやすい」ところもあれば、「起きにくい」ところもあります。

では、どんな場所が安全と考えられているかは、「緑の多いところ」です。
道路に街路樹が植えられていたり、緑の公園などがある地域では、犯罪が起きにくいのです。

緑の多さで犯罪発生率に差が出る

シカゴの大規模な公営団地開発計画をテーマにした研究があります。
政府の助成を受けて、イリノイ大学のフレンセス・クオが研究を行いました。

この開発計画では、敷地の片側にはかなりの木々が植えられていたのに、反対側はコンクリートジャングルのようになっていました。

2つの区域の犯罪発生率を調べると、緑の多い地区では、コンクリートだらけの地区より、盗難が48%、暴力事件が52%も少ないことがわかりました。
ほとんど地理的に変わらない公営団地の区域でも、このような差が出てきてしまうのです。

同じようなところで繰り返し起こる理由

犯罪が起きるところでは、何度でも頻発に犯罪が起きます。
そして、起きないところでは、ほとんど起きないものです。

都会においてもそういう場所はすでに特定されているので、痴漢が多いとか、暴行事件が多いとか、そういう場所は避けたほうがいいでしょう。
そのときに役立つ手がかりのひとつが「緑の多さ」です。

犯罪の多い地域は、人がストレスを感じやすいところだといわれています。
ごみごみしていたり、異臭が漂っていたりすると、人はイライラしやすくなります。
コンクリートだらけの殺風景なところもイライラします。
そのために犯罪が増えてしまうと考えられています。

なぜ事件の報道後に似たような犯罪が増えてしまうの?

ある犯罪事件が大きく報道されると、似たような事件がつづくことがあります。
これはテレビの影響が思いのほか強く、真似をしようと感化される人がいるからです。

犯罪が成功すると英雄扱いされる?

犯罪事件などがメディアで大々的に報道された後は、しばらく気を付ける必要があります。
同じ事件を真似しようとする人が増えるからです。
いったん犯罪が起きると、似たような事件が立てつづけに起きやすいといわれています。

インディアナ大学のロバート・ホルデンは、アメリカ国内で発生したハイジャック事件について調べました。

ハイジャックが成功した事件78件と、失敗した事件38件を調べてみて、ハイジャックが成功すると、その後にはハイジャック事件が増加することがわかりました。

ニュースで犯人が取り上げられるとき、成功したりしてしまうと、英雄のように扱われます。
そのため、それを見た人が、同じことを真似しようとするのです。
ちなみに、失敗したときには、「やっぱり悪いことはできないよね」ということで、模倣犯罪は増加しませんでした。

報道されたことと似たようなことが連続する

電車内での痴漢が増えているという報道があると、その後はやっぱり似たような痴漢の事件が続きますし、飛行機事故の報道があると、飛行機事故が連続しますし、コンビニ強盗の報道があると、似たような強盗事件が起きます。

また、有名人の自殺などが報じられたときにも、自殺が続くことが知られています。
このことは「ウェルテル効果」という名前が付けられています。

かつて文豪のゲーテが「若きウェルテルの悩み」という本を書きました。
主人公のウェルテルが自殺するというお話なのですが、この本が出版されると、その後に若者の自殺が相次いだのです。

そのため、メディアで自殺報道がなされると、その後しばらくは自殺が増えてしまうという現象のことを「ウェルテル効果」と呼ぶようになりました。

メディアの影響は、私たちが思っている以上に大きいものです。
犯罪や事件が報道されたときは、自分に関係ないと思うのでなく、自分の周りにも危険があるかもしれないと考えて行動したほうがいいでしょう。

まとめ

犯罪は社会的・心理的要因が相互にからんで起きていると考えられます。
たとえやむを得ない事情があったとしても、犯罪を犯せば、被害者に肉体的、精神的に苦痛を与えることになります。
しかも、被害者だけでなく、あなたの家族や親しい友人を悲しませることになります。
罪を犯せば、なかったことにはできません。
魔が差すのは一瞬でも、償いは時間がかかる、時間をかけても償えないこともあるので、自分の行動には気を付けていきたいですね。

参考文献
「史上最強カラー図解プロが教える心理学のすべてがわかる本」

「身近にあふれる心理学が3時間でわかる本」