本音と建前が違うときに、心の不快感をどのように解消していますか?
人は自分自身で都合の良い納得いく理由(いいわけ)を考えて解消します。
心理学にある「認知的不協和」という言葉を使って紹介します。
認知的不協和とは?心の中の食い違い
たとえば、たばこを吸いたいと思う気持ちと、たばこはからだに悪いからやめないといけないと思っている気持ちがあって心の中で葛藤しているとします。
このような矛盾した、考えや態度、信念を持つと、私たちは緊張や不快感を覚えます。
心の中の食い違いを「認知的不協和」と言います。
認知的不協和は、アメリカの心理学者、フェスティンガーにより理論化されています。
フェスティンガーは、認知的不協和は物事をすでに決定したときや、他者から強要されて何かを受け入れたときに起きやすいとしました。
また、その情報に偶然出会った場合も起きやすいとしています。
認知的不協和が起こると、人は認知的不協和を解消しようと態度を変えることがあります。
たとえば、本当は反対していたはずなのに、周囲が賛成しているので、賛成の意見に流されて賛成してしまった場合、「いや、実は最初から賛成するつもりだったんだ」と考えを変えてしまう、このような経験はありませんか。
また、学校の受験で、第一志望の学校に学力で手が届かないとしましょう。
「第一志望の学校に行きたい」「でも学力が足りない」という認知的不協和が起きている状態です。
そこで、「第一志望の学校に行きたい」を「実は第一志望の学校は別だった」「第一志望の学校は評判悪いからな」などと変えることで、不協和、心の中の食い違いを解消しようとします。
身近にある認知不協和

おいしいと評判のお店に並んでまで食べたのに、あんまりおいしくなかったなぁ。

やせたいと思うけど、ごはんの量へらせない。

あの人をデートに誘いたいけど、自分じゃ相手にされないよなぁ。
このような矛盾した気持ちは身近にあります。
私たちはどのようにして、認知的不協和を解消しているのでしょうか。
認知的不協和の解消法について
認知不協和が起こったときの解消法はいくつかのパターンがあります。
解消法の中から、そのときの自分にとって一番都合のいい解消法を探し選びます。
具体的には4つ方法があります。
- 不協和を起こしている認知要素の一方を変化させる
- 認知要素の重要性を変える
- 別の認知要素を加える
- 新たな情報への選択的接触
たとえば、お酒が好きな人が、健康を気にすることで認知的不協和を起こしたとします。
1.不協和を起こしている認知要素の一方を変化させるを選択
- お酒をやめる
- 1日の飲む量を減らす
- 休肝日をつくる
食い違っているところを変えて、不協和を解消する方法です。
2.認知要素の重要性を変える
「お酒をたくさん飲んでも元気な人がいる」「お酒は百薬の長というじゃないか」など、お酒の害について低く見積もることで安心する方法です。
3.別の認知要素を加える
「お酒を飲むことでストレスを解消できる」「リラックスできる」「楽しくおしゃべりできる」などで、お酒を飲むことはいいことであるという別の認知要素を加える方法です。
4.新たな情報への選択的接触
お酒は害であるという情報を避けるなどで、お酒がからだに悪いという情報を避けて、不協和を解消する方法です。
認知的不協和から恋が生まれる?
ドラマや映画で、助けられた女性が助けてくれた男性に恋をする、あるいは助けた男性が助けてあげた女性に恋をする、というシーンを見たことがありませんか。
なぜ、恋に発展するんでしょうか、認知不協和から考えてみます。
人は普通、相手を好きだからこそ助けると思っています。
嫌いな相手は助けません。
嫌いなのに助けたとなれば、その思いと行動に矛盾が生じます。
矛盾があると違和感や不快な気持ちが生じます。
そこで、矛盾を解消するために、「自分は相手を好きだから助けた」と納得させるのです。
このように、心の中にある矛盾を解消しようとする心理作用が働きます。
たとえば、仕事が納期までに終わらせそうにない女性から、手伝ってほしいと頼まれた男性が、「なぜ、僕は彼女の頼みを引き受けたのだろう」と思います。
そして、「嫌いな人の手伝いをする気にはなれない」→「だから僕はこの人が好きなのだ」→「そうでなければ、自分の行動に矛盾するから」と、自分の行動に説明をつけ、納得させるというわけです。
「別れたいけど、別れられない」という女性も、まわりから見れば、「別れようと思えばいつでも別れられるのに、どうして別れないのだろう」と思われますが、本人は、「別れたいけど別れられないのは、彼を愛しているからなのだ」と思い込んでいる。
あるいは、そう思うことで自分を納得させているのかもしれません。
まとめ
やめたいことをやめられない理由には認知的不協和があるかもしれません。
やめたくない理由を自分自身でつくり、やめなくていいように自分にとって都合のいい選択をしています。
しかし、その選択をしている自分を責めてはいけません。
そこには理由があります。
理由がわからにことには、本当の解決はできません。
自分との対話では分からない場合は、専門家に相談することをおすすめします。
参考文献
「史上最強カラー図解プロが教える心理学のすべてがわかる本」
「面白いほどよくわかる!他人の心理学」