老化によると認知能力の変化と認知症についての症状

keikaキャリア

最近は、高齢者の人が車の免許を返納することが多くなってきています。
人は年をとると認知能力に変化します。
老いによる認知能力の変化と認知症について解説します。

老いとは?

日本の平均寿命は延び続けています。
平成30年簡易生命表によると、男性の平均寿命は81.25歳、女性の平均寿命は87.32歳です。
平均寿命が延びているということは、長生きしてどのようにして生きて過ごしていくのかが課題と言えます。

そもそも老いとは、一般的に中年期から始まった身体的な衰えからだと言われています。
外見上では、白髪が増え、しわが増し、身長、体重が減っていきます。
腰と背中の筋肉が弱るため、背筋が曲がり前屈みの姿勢をとるようになります。
また、呼吸器系、内分泌系、泌尿器系、消化器系、循環器系と生理機能の低下も進んでいきます。

このように老化は、外見上の衰えに生理機能の衰えが重なることで生じます。
病気やケガをともなわない健康的な範囲であれば、数十年をかけて少しずつ進むものです。
これが老いです。

高齢社会

総人口のうち、65歳以上の高齢者が占める割合を高齢化率といいます。
これが7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会とよんでいます。
日本の高齢化率は20%を超え、2030年には28%になると推定されています。

老いによる認知能力の変化

老化は知覚能力、認知能力の変化をもたらしまう。
五感が鈍くなること、記憶力が衰えることはよく知られていることだと思います。
老いは衰えるだけでなく、知能は伸び続けると言われています。
これまで生きてきた経験が糧になる、文化、教養、知識に関する知能は、意欲次第で老年期においても衰えないのです。
芸術や文学の世界で高齢であっても活躍されていることからも明らかですね。
このような知能を結晶性知能といいます。

伸びる知能があれば、衰える知能があります。
衰える知能のことを流動性知能といいます。
問題解決能力や、短時間での情報処理に関する能力であり、新しい場面に適応したりするときに働く知能です。
こうした老化現象は予備力、防衛力、適応力、回復力の4つの力の低下であるとまとめられています。

予備力・・・身体的機能の余裕
      日常生活で必要な能力と最大限の能力の差

防衛力・・・病気への抵抗力、免疫力など

適応力・・・新しい環境に順応する力

回復力・・・病気、ケガ、疲れから回復する能力

認知症

老年期に抱える問題として認知症があります。
認知症の原因は主に、アルツハイマー型、脳血管性型、レビー小体型に分けることができます。

認知症全体の約半数を占めるのがアルツハイマー型認知症で、特徴が記憶障害です。
忘れ物がひどくなり、家族の名前すら忘れてしまいます。

脳血管性認知症は、麻痺や言語障害が起こります。
近年では、麻痺や言語障害の多くがアルツハイマー型認知症と言われています。

レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症についで多いと認知症です。
典型的な症状は、認知障害で、特に実在していないものが見えてしまう幻視です。
運動機能障害も起こり、歩行障害や体の固さをともなうのも特徴です。
男性の発症が女性の約2倍と言われています。

認知症3つのタイプ

アルツハイマー型認知症
脳の神経細胞が激減して脳が委縮、知能の低下や人格の崩壊が起きる

脳血管性認知症
脳の血管が詰まったり破れたりすることで、その部位の脳の働きが悪くなり、発症する

レビー小体型認知症
大脳皮質の多数の神経細胞内に、レビー小体と呼ばれる異常な構造物が現れることで起こる

認知症かどうかを正確に判断するものではありませんが、日常生活において認知症と疑わしい項目をまとめてみました。

疑わしい認知症の行動事例

  1. いつも同じことを繰り返す
  2. 「あれがない」「これがない」といつも捜し物をしている
  3. なくなったものを人のせいにする
  4. 話のつじつまが合わず言いつくろうとする
  5. 話があちこちに飛ぶ
  6. 食べたことを忘れることがある
  7. 今までできていた料理ができなくなる(味付けが変わる)
  8. 同じものばかり買ってくる
  9. 蛇口やガス栓の閉め忘れがある
  10. リモコンなど家電製品がつかえなくなる
  11. テレビ番組の内容が分かりにくくなったと感じる
  12. 薬を飲み忘れ管理ができなくなる
  13. 身だしなみに無関心になった
  14. 約束の時間や場所を間違えるようになる
  15. 外出先から家に帰れなくなったことがある
  16. なんとなく以前と人柄が変わったように見えることがある

出典:「これって認知症ですか」認知症予防財団の資料から

これらの項目が普通とは言えないレベルで、かつ最近になって起きた場合には、専門の医療機関の受診をおすすめします。

認知症の治療は、何よりも早期発見、そして医療機関に相談することです。
本人は自分の変化に悲しみや不安を感じています。
その気持ちを受けとめて、本人の自尊心を尊重しながら支えることが大切です。

症状は徐々に進行する

認知症には、持続して現れる中核症状と、それに伴って可逆的に表れる周辺症状があります。
中核症状の中心は記憶障害、いわゆる「もの忘れ」です。

もの忘れは誰にでも起こりますが、認知症のもの忘れと加齢によるもの忘れには違いがあります。
加齢によるもの忘れは、「夕食で食べたものを忘れた」というように、体験の一部を忘れてしまいます。
認知症の場合は、しだいに進行して、夕食を食べたこと自体をすっかり忘れてしまいます。

アルツハイマー型認知症では、こうしたもの忘れが徐々に増えます。
中期になると、場所や身近な人物がわからなくなったり、複雑な会話が難しくなります。
後期では、日常生活のほとんどに介助が必要になります。

脳血管性認知症は、脳の障害された部位によって症状や進行の仕方はさまざまです。
脳血管障害が再発するたびに、段階的に悪化するといわれています。

認知症の方へ対応について

①通帳がない
認知症の方が家族に「自分の通帳がないのだけど、どこにしまった?」と言われた場合です。
「もの盗られ妄想」と呼ばれる症状で、大切なものをしまった場所を忘れてしまい、身近な人が盗んだと疑ってしまい、本人は盗まれたと思い込んでいます。
対応としては「そんなこと知らない」と否定するのではなく、認知症の方の不安な気持ちを受けとめて、否定せずに話を合わせることが大切です。
そして、一緒に探し、通帳があったとしたら、認知症の方が自分で見つけたように誘導します。
なによりもプライドを傷つけないことを大切にしてください。

②食べていない
晩ごはんを食べたばかりなのに、「晩ごはんはまだか?」と聞いてきます。
何回食事をしても、食べていないと言い張ります。
食べたことを完全に忘れてしまう「記憶障害」によって引き起こされるものです。
「もう食べたでしょう」と否定するのではなく、「今、支度しています」と、すぐに食べられる安心感を与えることが大切になります。
そして、軽いおやつ、おかずを少量渡します。
3回の食事を小分けにして回数を増やすのも良い方法です。

③薬を飲まない
飲むのを忘れたり、1錠でいいところを2錠飲んでしまったり、飲んだかどうかわからなくなってしまうのです。
薬は1包化にしてもらい、カレンダーに飲んだかどうかを印します。
そして、しっかり飲めていないことを医師に相談します。

④夜中、起きている
認知症は昼間、眠らずにウトウトしているために、睡眠のリズムが乱れています。
「昼夜逆転」という症状で、トイレに何回も起き、冷蔵庫をあさったり、タンスを開けて捜しものをしたりします。
対策としては、昼間は「デイサービス」に行かせて、適度に運動をさせて、昼間は寝させないようにします。
昼間は動いて、夜は休むというリズムを作ることがベストです。
やさしく「おやすみ」とにっこり笑って声をかけると、気持ちが落ち着くことがあります。
それでも、寝付けない状況が続く場合は、専門医に相談しましょう。

⑤自分の子どもがわからなくなる
自分の子ども(息子や娘)をみて、「あなたはどなたですか」と言われてしまいます。
「人物誤認」という症状で、記憶に残っているのは子どもの頃の顔です。
今の子どもの顔が浮かんできません。
実際に自分の親に言われるとショックを受けてしまいますが、強い口調で「子どもだよ」とは言わないでください。
新たな関係を築くつもりで、やさしく「私は子どもの○○だよ」と伝えます。

⑥自分の家に帰りたがる
住み慣れた自分の家でも、夕方になると「家に帰りたい」と言って家族を慌てさせます。
「夕暮れ症候群」と呼ばれるもので、若い時に住んでいた家を覚えていて、そこに帰ろうとします。
対応としては「今日は泊まって、明日帰りましょう」とか「帰る前にお茶でもいかがですか」と言って、帰りたい気分を変えます。
それでも、承知しない場合は「家に帰りましょう」と気持ちを受けとめましょう。
家族の者が一緒に出掛けて、しばらく寄り添いましょう。

⑦真夏なのにセーターを着ている
認知症になると、季節感が失われて、季節に関係のない服を着てしまいます。
服は無理やり着替えさせるものではなく、季節に合った洋服を探して「この方が似合いますよ」と鏡の前で納得させて、着替えさせます。

⑧暴力をふるう
突然、意味不明な怒りや興奮、暴言、暴力をふるうことがあります。
その理由は、
・気に入らないことがことがある
・不安や心配がある
・睡眠不足やどこかに痛みがあるなど
それを上手く伝えられないことが、こうした行動を引き起こしてしまうのです。
対応としては、慌てないでやさしい声を掛けます。
「どうしたの」「どこか痛いの」「何か欲しいの」と言って本人の気持ちを受けとめます。
それでも、興奮がおさまらないときには、時間と距離をおきます。

⑨大声を出して困る
夜中に奇声をあげたり、大声を出して騒ぐことがあります。
認知症の心理症状のひとつと言われていて、近所迷惑で、家族のみんなが眠れません。
認知症が進行すると焦りや不安、恐怖から大声で何度も人を呼んだりします。
これに対しては、誰かがそばにいてあげることです。
そうすると、気持ちが落ち着いてくることがあります。
決して口をふさいだり、言い聞かせてたりしてはいけません。
さらに、幻覚から大声を出す場合がありますが、レビー小体型認知症と言われる認知症です。
このような場合は、専門医に相談することをおすすめします。

⑩お風呂に入らない
認知症の方はお風呂に入らないことがあります。
お風呂に入るのが面倒になってしまうようです。
また、入浴の理解ができないや人前で裸を見られたくない、下着や衣服の汚れを人に見られたくないということも理由にあります。
対応としては、家族がゆっくり笑顔で、お風呂に入ることをすすめます。
それでも、入らない場合は、デイサービスを利用して、入浴させることができます。

参考:「ウソ!まさか!なぜ?認知症」認知症予防財団

まとめ

老いによって、衰える能力はあります。
将来自分はどう生きていくかを若いうちに考えておくことで、将来の不安を少しでも減らしておきたいですね。

もの忘れは誰にでもありますが、認知症はもの忘れだけではありません。
もの忘れ以外にも、いつもと違うや少しでもおかしいかなって思ったことがあれば、医療機関に相談です。
認知症は、早期に発見できれば、症状の進行を遅らせたり、対策ができます。
自尊心を持ったまま最期をむかえたいですよね。

参考文献
「史上最強カラー図解プロが教える心理学のすべてがわかる本」

「やさしくわかる精神医学」

「認知症対策の新常識」