心理学は行動を研究対象に「行動主義の主張」

pcnote心理学

意識ではなく行動を研究対象にした行動主義とはどのようなものだったでしょうか。
行動主義から新行動主義がでてきた理由について紹介します。

行動主義の研究とは

アメリカの心理学者ワトソンは、心理学が科学になるためには「意識」ではなく、外部から客観的に観察することできる「行動」を研究するべきだと主張しました。
あらゆる学習は基本は条件づけだと考えました。
条件付けの原理に基づく行動療法となるさきがけとなる実験を行いました。

実験は、生後11カ月のアルバート坊やを対象にした実験で、アルバート坊やの実験と言われています。

アルバート坊やの実験は、恐怖の条件付けの実験です。
実験を始まる前のアルバート坊やは、白ネズミ、白ウサギ、毛皮、サンタクロースのお面などには恐怖を見せませんでした。
実験で、アルバート坊やに、白ネズミを見せると同時に大きな金属音を聞かせる条件付けを繰り返しました。
すると、アルバート坊やは白ネズミを見ると逃げるようになりました。
さらに、白ウサギを見ても逃げるようになり、毛皮やサンタクロースのお面に対しても恐怖反応を示すようになりました。

行動主義から新行動主義へ

ワトソンの主張するように研究対象を「行動」に限定することは、「意識」を捨てることになります。
たとえば、「餌を与える回数を変化させるとネズミがレバーを押す回数はどう変わるのか」という条件付けの仕組みを明らかにすることが、行動主義のもとでは主要な研究テーマになりました。

人間のあらゆる高度な精神活動も、すべては単純な刺激(Stimulus)と反応(Response)の連合という単位の集合にすぎないと考えたのです。
行動主義がS-R連合理論と呼ばれているのは、刺激と反応からきています。

心理学の対象が単純な行動に限定されたことによって、記憶、知識、理解、思考、言語などの人間の固有な精神活動が、心理学の研究対象から除外されました。
行動主義の心理学に対して「心なき心理学」という批判がでました。

批判を受けて、1930年から1950年代にかけて、新行動主義として、刺激と反応の間を媒介する生体の条件にも目をむけました。

トールマンは、刺激と反応の間に期待や動因などの媒介変数を仮定することを提唱しました。
また、ハルは、生体の内部で生じているプロセスの仮説的な数理モデルを構築する行動主義者もでてきました。
さらに、スキナーは、ワトソンの古典的条件付けとは別に、生活体が能動的に学習する点に着目し、オペラント条件付けの理論を提唱しました。

新行動主義の立場は研究者によって違いますが、2つの共通点があります。

  1. 行動を筋や腺の反応のような分子的行動でなく、より総体的で心理学的なレベルでとらえる。
  2. 機械的なS-Rという枠組みでなく、S-O-R図式に基づく理論が主流になり、生活体(O)の能動的・主体的な側面を強調する。

行動主義のその後

新行動主義によって、行動主義の心理学の領域が、記憶、学習、思考など人間の認知過程へと広がりました。
それに伴い、人間の複雑な認知過程を「刺激と反応の連合」という単純な図式で説明するのは難しいことが認識されるようになり、人間の認知過程を研究するための新しい枠組みが模索されました。

1950年半ばに、人間を一種の精巧なコンピュータとみなして、知覚、記憶、学習、言語、思考、推理などからなる多様な認知過程を包括的記述・説明することを目指す、認知心理学という新しい枠組みができました。

認知心理学は発展して、1960年代以降には行動主義の勢力は衰えました。
しかし、行動主義の影響力がなくなってしまったわけではありません。
臨床心理学では、行動主義の理論に基づく行動療法や認知行動療法が発展しています。

まとめ

行動主義のアルバート坊やの実験は、私の個人の意見ですが、倫理的に良くない実験だと思います。
子どもの成長に悪影響しかありませんよね。
人間の学習や発達を解明しようとして、なぜ恐怖の実験をしたんでしょうね。
現在では、考えられない実験ですね。
そして行動主義の考え方は、心理療法に活用されています。

心理学は実験や批判を繰り返し、現在も研究されている学問です。
学べば学ぶほど奥が深い心理学をもっと学びたいと思いました。

参考文献
「よくわかる心理学(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)」