困っている人がいれば、助けたいという気持ちはみなさん持っていると思います。
実際に、助ける行動ができる、できないの違いは何でしょうか?
心理学から見た援助行動について紹介します。
傍観者効果
援助行動の研究は、1960年代のニューヨークで起こった事件がきっかけで始まったと言われています。
事件の内容は、キティという女性が暴漢に襲われて周りに助けを求めました。
しかし、多くの人が助けが求められていると知りながら、誰も彼女を助けなかった結果、亡くなってしまいました。
社会心理学者のラタネとダーリィは、被害者の周りに多くの人が存在したために責任の分散が起こり、援助行動が抑制されたと考えました。
援助行動が抑制されたことを傍観者効果といいます。
ラタネとダーリィは、傍観者効果の仮説を検証するために実験を行いました。
大学生を大学生活についてディスカッションしてもらう目的で集めました。
ディスカッションは「2人」「3人」「6人」で行い、それぞれインターフォンを通じて話し顔が見えない状態で会話をするようにしました。
そして、ディスカッションが始まって1人が突然発作が起こり助けを求めます。
助けを求められた側はどのような行動をするのか、この実験の内容です。
実験結果は、「2人」でディスカッションをしていた場合は、もう一人がすぐに助けようとして行動を起こしました。
「3人」「6人」の場合は、責任の分散が起こり、すぐに助ける行動が起こせなかった。
特に、「6人」の場合は最後まで助けようとしなかった人が40%近くもいた実験結果になりました。
援助行動を生じるプロセス

他人がそばにいるときは責任の分散が起きる
自分以外に他に人がいると、「誰かが助けてくれるだろう」と思って責任の分散が起こり、自分が助けるのをためらってしまいます。
もし、自分が助けを求める側になったときは、不特定の誰かではなく、誰か1人に的を絞り助けを求めるほうがよいとされています。
援助行動の相互抑制効果
困っている人を見て助けるかどうかは、他の人の存在だけでなく、他人の判断や行動ににも影響をうけます。お互いにどうするかを見ているうちに、結局行動しなかったということもあり得ます。
これを援助行動の相互抑制効果といいます。
相互抑制効果の検証実験があります。
- 大学生に部屋でアンケートを答えてもらう
- 部屋には「自分1人」と「自分以外に2人、合わせて3人」の2つのパターン
- アンケートに答えていると、部屋の換気口から煙が出てくる
このような条件で実験を行って、部屋で1人で答えていた場合は、75%の学生がすぐに緊急事態を伝えてきたそうです。
3人がいる部屋では、煙が出ても周りにの2人が何もなかったようにアンケートに答えていると、10%しか助けを求める行動をしなくて、残り90%の学生は、他の2人に倣って行動を抑制した結果が出ました。
援助行動の相互抑制効果

緊急事態か?
⇩

でも周りのみんなは冷静だ・・・
⇩

うーん、緊急じゃないのかなぁ
⇩

じゃあ、このままでいよう
⇩
援助をためらう
緊急事態であったとしても、そこで誰も動こうとしない場合は、緊急性はなしや自分だけ人と違う行動をすると目立って恥ずかしいといった判断が働き、援助行動をためらってしまいます。
援助の返報性
一般的に、自分を援助してくれた人には、相手に援助をすることにためらうことはありません。
人は他者から受けた行為を相手に返すという返報性という考えを持っているからだと言われています。
「情けは人の為ならず」という言葉があります。
確かに、人を助けることは気持ちの良いことです。
自分も相手も救われるので、みんなが行えば、世界は優しいものになります。
しかし、なんでもかんでも助けたからといって見返りが必ずあるものでないのと、トラブルになる可能性もあります。
このことを踏まえて、たとえ緊急であったとしても、冷静に物事を判断して、援助なり対処していけるようになっていきましょう。
まとめ
助けたいけど助けられないのには理由があります。
理由があるからといって、無視をしても良いということではありません。
人を助けるのは勇気がいります。
あなたの勇気で救われる人がいますので、困った時はお互い様の精神で援助という行動をしてみませんか。
参考文献
「史上最強カラー図解プロが教える心理学のすべてがわかる本」