あなたは自分と似ているタイプの人か、それとも、自分とは異なった似ていないタイプの人では、どちらを好きになるでしょうか?
自分と似ている人に好意を感じることは、類似説(類似性への魅力)と呼んでいます。
また、自分と異なった似ていないタイプの人に好意を感じることを相補説(相補性への魅力)と呼びます。
人に対して感じる魅力、類似説と相補説について紹介します。
自分と似ている人は魅力的?(類似性への魅力)
類似説は、バーン(Byrne,D.)とネルソン(Nelson,D.)が、人は自分と似たような態度や意見をもつ相手に対して、より好意を感じやすいのかについて研究しています。
研究の実験に、実験参加者に態度や意見についての簡単な質問紙に答えてもらうようにしました。
答えを記入後、実験参加者に、自分と同じように実験に参加している相手(架空の人物で実際には存在しない)と、これから会ってもらう告げ、会う相手が回答したとされる質問紙を見せました。
この見せた質問紙は、実験参加者が回答した質問紙を参考にして実験者が作ったものです。
その内容は、実験参加者の態度や意見と非常に似ているものから、まったく似ていないものまであり、実験参加者たちに無作為に見せました。
実験参加者たちに、これから自分が会うであろう人物の回答した質問紙を見たときに、回答した人物に対して好意度を答えてもらいました。
実験の結果、実験参加者と相手の質問紙との態度や意見の類似性が高かければ高いほど、相手にたいする好意度が高まると結果が出ました。
相手の態度や意見が似ているほど、その相手に対して魅力を感じやすくなったと言えます。
どうして似ている人を好きになるの?
他者から認められることで自分の考えを正しいと思うこと、合意的妥当性が考えられます。
自分が何か意見を言ったときに、他の人から「私もそう思う」と言われると、うれしい気持ちになりますよね。
反対に、「私はそうは思わない」と返ってくると、残念な気持ちになるでしょう。
人というのは、基本的に自分の考えはある程度正しいと思っていたいものです。
自分と態度や意見が似ている人と一緒にいれば、自分の意見は肯定されることが多くなり安心できます。
しかし、自分と態度や意見が似ていない人と一緒にいると、自分の意見が否定されやすくなり、嫌な気分になり不安です。
だから、人は自分と似た態度や意見の人に対し魅力を感じ、好意を抱きやすくなるのです。
類似説はもう一つの理由があります。
自分に似ている相手であれば、相手の感情を理解しやすく、相手の行動も予想しやすいから、一緒にいても精神的負担はそれほどありません。
自分と似ている人は、一緒にいて落ち着けるという点で、好意を持ちやすくなると考えられています。
自分とは異なった似ていない人は魅力的?(相補性への魅力)
人は自分に似た人にしか魅力を感じないのでしょうか。
いいえ、そんなことありません。
自分にないものをもっている人に対しても好意をもちます。
自分に似ていない人に憧れたり、好きになったりした経験があるかもしれません。
このように自分に似ていない人に対して好意を抱くことは、相補性への魅力、相補説と呼ばれています。
相補説は、ウインチ(Winch,R.F.)やワグナー(Wagner,R.V.)によって研究されています。
相補説に関しては、主に性格にみられやすいとされています。
相手のことを世話をしてあげたい人は、同じ世話好きの人ではなく、世話を焼いてもらいたい人のことを気に入りやすいということです。
また逆の、世話を焼いて欲しい人が世話好きの人を気に入りやすいことも言えます。
好きになるのは似ている人?似ていない人?
似ている人、類似性のある方が、魅力を感じやすいと言われています。
ただし、関係が浅い、初対面などのときに類似性が作用しますが、関係が長くなったり、深くなるにつれて、お互いを補えるような相補説の魅力を感じる傾向がでてくるとも言われています。
好きになってほしいのなら自分から「好意の返報性」
あなたの身近なところにいる人気者を思い浮かべてみてください。
誰からも好かれているような人です。
思い浮かべた人の中に、どうして人気があるのかわからない人はいないでしょうか。
誰もが見とれるほどの容姿がいいわけでもない、仕事が誰よりもできるわけでもない。
それなのにみんなから好かれている・・・という人はいませんか。
一見すると、人をひきつけるような魅力がないのにどうしてとなります。
でも、よく思い浮かべてみてください。
その人は「とにかく人が好き」ではありませんか。
たとえば、あなたが誰かのことを好きになれば、その好意はそのままあなたに返ってきます。
その人も、みんなのことが好きだから、みんなから好かれていると考えられます。
心理学ではこれを「好意の返報性」と呼んでいます。
こちらが相手に好意を示せば、相手もこちらに好意を示しやすくなるという法則です。
好意とは、一方通行ではなく、相手からも返ってくるものです。
ノース・イースタン大学のジュディス・ホール博士の調査によると。
病院に通っている70歳以上の男女530名を対象に、「担当のお医者さんにどれくらい好感をもっているか」を尋ねました。
そして同時に、医師たちにも「それぞれの患者さんにどれくらい好感をもっているか」と尋ねました。
調査結果は、医師から好かれている患者さんほど、その医師のことを好いていることがわかりました。
好意の返報性があったといえます。
好きになってと求めるのではなく、相手に好意を伝えることで相手からも好意が返ってくる「好意の返報性」を使って良い人間関係を築いてみませんか。
まとめ
結局は、自分に似ている人も似ていない人も好きになるということです。
類似性、相補性どちらのタイプが良いというわけではありません。
どちらのタイプともバランスよく、うまく付き合っていけるといいですね。
参考文献
「よくわかる心理学(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)」
「一瞬で人を操る心理法則」